クロマの幻聴

頭から爪先まで
露かぶり滴るまで
忙しさと虚しさと
夜を越えた森を踏み鳴らして
ヴィオラを待つこの場所で
揺蕩うクロマの調べ
行かないでと背に謳う
彼らに贈る出来合いのレクイエム

物語る
絵空色づく世界で
君が生きていれば今頃
どのくらいの春を咲かせたのだろうか
五線の空白に尋ねて澄まして

張り詰めた糸の上で
呟く秘め事に嗤われているのか
惜しむのか
枯れ落ちる悲鳴に耳を塞いだこと

物語る
嘘めいた残響に応えて
指が踊り出すほどに手慣れた自戒を
誰か耳にするだろうか
螺旋のビブラートのための空洞

1, 2, 3, and more and more
They color the treetops, claim the name “sound”
A lost ensemble in my soul
Embrace me with a cloth of thorns

針葉樹の中に
閉じ込めて贖うはずの
愚かなる問答を
まだ繰り返す
自由はこんなに綺麗で
同じくらいに殺風景だから
愛で方を知らなくて
私の中にある
無観客のクロマの幻聴
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