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  • ヒグチアイ
    怒らない代わりに笑わなくなった。わたしはどこにもいなくなった。
    怒らない代わりに笑わなくなった。わたしはどこにもいなくなった。

    ヒグチアイ

    怒らない代わりに笑わなくなった。わたしはどこにもいなくなった。

     2019年9月25日に“ヒグチアイ”がメジャー3枚目となるニューアルバム『一声讃歌』をリリースします。さらにその発売に先駆け、2019年6月19日を皮切りにデジタルシングル三部作を配信することが決定。第1弾「前線」、第2弾「どうかそのまま」、第3弾「ラブソング」が配信中です。さて、今日のうたコラムでは、そんなリリースを記念して“ヒグチアイ”本人がエッセイを執筆!  7月~9月の期間、月1度、スペシャルな記事をお届けしてきました…!そして、今回がその最終回となります。尚、待望のニューアルバムは、ヒグチアイが自身の過去を振り返って、これまでの自分と向き合いながら制作されているとのこと。今回のコラムも、何かの収録曲に、どこかのフレーズに、繋がっているのかもしれません。それでは 第1弾エッセイ 、 第2弾エッセイ に続く、最終回をじっくりとご堪能ください! 【最終回:ラブソングをあなたに】 知人が出会い系アプリで出会った人と結婚した。下心なのか?そうでないのか?の駆け引きをすっ飛ばしているから、素直になれるらしい。なるほど、恋愛で一番難しいのは素直になることだったんだ。 四年前。何度も浮気され、何度も騙され、お金も貸して、それでも好きで付き合っていた恋人がいた。最後はわたしから別れを告げた。でも真実は、相手が言葉にしないからわたしが言うしかなかった、だけのことだ。もっと前に別れていれば、と思うことが今でもある。後悔先に立たず。 なぜ、わたしが別れなかったかと言うと、恥ずかしかったからだ。浮気されたわたしが可哀想で惨めで、恥ずかしかったから。わたしは大人だと、そんなことで別れるような女じゃないと、もっと肝の座ったでかい女なんだと思われたかった。誰に。たぶんわたしを知る人全員に。それは仮面であり、着ぐるみであり、虚像であったけれど、身につけるのは難しくなかった。 そのせいで、わたしは薄くなっていった。わたしの中のわたしは小さくなり、ヒグチアイさえも消し去りそうになっていた。実際、声の出し方も、歌詞の書き方も、なにもかも変わっていた。わたしを偽ってしまったら止まらなかった。表情はかたく、怒らない代わりに笑わなくなった。わたしはどこにもいなくなった。 そんなときに、思い出したことがある。その話が、このコラムの 第1回 、 第2回 の話だった。わたしはたしかに家族に愛されていて、人を愛していて、どうでもいいようなことを覚えていた。そして、ちゃんとしあわせを知っていた。それに気付くまでにかなりの時間が経った。思い出がわたしを素直にしてくれた。 さよならをして、家を引き払った。敷金が大量に返ってきて、それを全額もらって貸したお金はチャラにした(敷金の方がちょっと多かった)。引っ越した先のアパートは畳の部屋をフローリングに改装したのだろう、窓の低い家だった。春には桜が見える家だった。 思い出すことは、想うことだ。想うことで、想われるはずだ。思い出は燃料だ。たくさんの思い出を作って、また燃やして、わたしは今日も歌をうたっている。 <ヒグチアイ> ◆3rd full ALBUM『一声讃歌』 2019年9月25日発売 初回限定盤 TECG-37127 ¥3,364+税 通常盤 TECG-32128 ¥2,909+税 <収録曲> 01. 前線 02. どうかそのまま 03. 街頭演説 04. 風と影 05. バスタオル 06. 走馬灯 07. ほしのなまえ 08. 一週間のうた 09. いちご 10. 聞いてる 11. ラブソング ◆先行デジタルシングル三部作 第一弾「 前線 」配信中 iTunes AppleMusic Spotify 第二弾「 どうかそのまま 」配信中 iTunes AppleMusic Spotify 第三弾「 ラブソング 」配信中 iTunes AppleMusic Spotify <LIVE> ■HIGUCHIAI band one-man live 2019 2019年11月16日(土) 東京 Veats shibuya 2019年11月24日(日) 大阪 梅田 Banana Hall

    2019/09/06

  • ななみ
    自分の中の感情の問題を解かない限り、次のステージには進めない。
    自分の中の感情の問題を解かない限り、次のステージには進めない。

    ななみ

    自分の中の感情の問題を解かない限り、次のステージには進めない。

     2019年8月12日に“ななみ”がニューアルバム『MR.』をリリースしました。彼女は、EDMトラックにアコースティックギター、独特のリズムワークで乗っかる歌声でオリジナルの音楽スタイルを展開するシンガーソングライター。令和初の今作には、アルバムタイトル曲「MR.」をはじめ、全6曲の新曲が詰まっております。  さて、今日のうたコラムではそんな“ななみ”がニューアルバム『MR.』のために執筆した、ご本人歌詞エッセイをお届けいたします…!これまで彼女が歩んできた人生。今作に込められた真の気持ち。そして、タイトル『MR.』に託された想い。是非、歌詞と併せて、ご熟読ください。 ~ニューアルバム『MR.』歌詞エッセイ~ 第1弾:「“あなた”というテストを受け続けた」 私はとても寂しがり屋だ。 一人でいると死んでしまうほどの寂しがり屋だ。 そのせいか人と関わることが多く、好きな人も嫌いな人も山ほどいて、常に“あなた”という存在と生きている。そして一緒に生きることによって自分に生まれる初めての感情が可愛くて仕方ないのだ。 例えば、中学2年生の時、私の机に飲みかけの牛乳パックを入れて放置した友達。最初は何でゴミが私の机に入っているのか理解できず固まっていたが、誰かにとって私の机はゴミ箱なんだとすぐ気づいた。でも、悲しくも苦しくもなかった。人の机をゴミ箱と思った友達の狂気が面白くて面白くて、しばらく私はその牛乳パックを机の中に入れたままにしていた。それはもう、宝物みたいに。この頃の私にはまだまだ感情が足りなかった。 例えば、17歳の時、家出した私に初めて怒鳴ってくれたお母さん。両親が離婚した後、お母さんはいつもニコニコしていた。私が不登校になっても、夜遊びに出かけても、いつもニコニコ。そしてとうとう家出をした時、電話がかかってきた。「帰って来なさい!」初めてお母さんの怒鳴り声を聞いた。私は嬉しくて嬉しくて、すぐに家に帰った。大切にされていることが嬉しくて、何か新しい感情を知れた気がした。 例えば、私が嘘をついた時、気づかずにいてくれた恋人。私は本当の事をいつも人に言えない。それは相手を傷つけないためじゃなくて、見損なわれないように自分を守るためだ。そうすれば嫌われる事もなく完璧でいられると思っていた。でもその嘘が全て恋人に気づかれていたと知った時、情けなくてやるせなくて自分が大嫌いだと思い知った。そして同時に、恋人の優しさも思い知った。 今までもこれからも生きている中で“あなた”という存在は常に現れる。知らなかった感情をもらって、私は大人になる。テストでわからない問題が出てきて悩んで答えを導き出すように、いわゆるこれは“テスト”だ。自分の中の感情の問題を解かない限り、次のステージには進めない。この先も出会う“あなた”から貰う感情がどんなに歪でも、私は次のステージに進むために解き続ける。 MR. = あなた 人は“あなた”という存在のおかげで、生きていく。 26年間生きてきた私が 知ることができた感情を、詰め込んだアルバム。 沢山の人に聞いて欲しい。 <ななみ> ◆ニューアルバム『MR.』 2019年8月12日発売 NANA-001 ¥2,000+税 <収録曲> 1.FIRE 2.CHAMELEON 3.MR. 4.Deadline 5.CRY 6.STAR acoustic ver. 収録曲歌詞一覧

    2019/09/05

  • 見田村千晴
    日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。
    日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。

    見田村千晴

    日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。

     2019年10月9日に“見田村千晴”がニューアルバム『歪だって抱きしめて』リリースします。その発売に先駆け、3ヶ月連続配信リリース企画がスタート。第1弾「 禁煙席 」、第2弾「 あの日雨が降ったから 」、第3弾「 独白 」が配信中です。そして今日のうたコラムでは、ニューアルバムリリースに向けて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届けしております。  まず 第1弾 では、見田村千晴さんと【言葉】の関係を綴ってくださいました。そして続く第2弾のタイトルは『「独白」するということ』です。ニューアルバムを放つ前に、配信された新曲「独白」はどのように生まれたのか。何故、生まれたのか。あなたの人生にはどのように響くのか。是非、歌詞と併せて、歌詞エッセイをご堪能ください…! 【第2回:「独白」するということ】 どちらか一方に過剰に感情移入することが、とにかく怖い。例えば女友達の、彼氏との喧嘩の話を聞いているとして(思い返せばそんな経験がほとんど無いけれど)、いかに彼氏がひどいことをしたのか、や、自分の正当性を話す友達を前に、「きっと相手側から話を聞けば、違う見え方なんだろうな」「一方からしか聞いていない話を鵜呑みにしちゃいけないよな」と私は思っている。口には出さず、ヘラヘラと頷きながら(そりゃ誰からも恋愛相談されないのも当然か)。昼のワイドショーも、誰かの炎上騒ぎも、これと同じスタンスで眺めている。“物事を俯瞰して見る癖がついている”と賢そうな言い方もできるが、極端に言えば“他人や社会に興味がない”んだと思う。だから、“敢えて距離を取っている”というポーズを取っているのだろう。 お酒に酔っているとき、ライブを見た帰りや、嫉妬に狂いそうになるとき。iPhoneのメモに、言葉を書き殴る(ような気持ちでフリック入力をする)。一語だけのこともあれば、Aメロ丸々くらいの量が一気に書けたりもする。でも、書いた次の瞬間に、フッともう一人の自分が警告音とともに登場するのだ。「この言葉は誤解を生むかもよ?」「これを親が見たら悲しむのでは?」「30代にもなってこんな青臭いこと書くなんて、ハズカシー」こうして、たくさんの言葉が葬られていく。 歌詞を書くには、ときに、主観的思い込み、暴走、空気の読めなさ、が必要なのかもしれないと私は思う。今回『独白』という曲を書くには、スピード感が必要だった。上記の理由で、日数をおいて冷静になってしまえば、おそらくあの歌詞は書けていない。経験上それが分かっているから、急いで完成させた。 どうして歌を歌っているのか? どうしてやめないで続けているのか? どうして苦しみながら曲を作るのか? どうして卑屈になるのか? どうして人付き合いが難しいのか? 自分のことを知りたい。知ることでしか、ここからまだ数十年、自分という乗り物を乗りこなしていく自信を持てない。『独白』はその一心で書いた。なかなか直視してこなかった自分自身の一部を、麻酔をかけてから一気にえぐり出すように。 だから、言い訳する余地が全くないほどに、自分のための曲だ。過去でもなく未来でもなく、今、自分を知りたいと思ったし、知って欲しいと思った。一方で、私自身の性質や境遇は、おそらくそんなに特殊なものでもない。得体の知れない生きづらさは、きっとそこらじゅうにある。外側からは見えない場合も、本人の自覚すらない場合もある。 それらを「救う」ことはできないけれど、「掬(すく)う」ことならできる。大事に掬って目の前に持ってきて、理解して、整理する。とても大切なことだ。私が見聞きしてきた様々な言葉にそうしてもらってきたように、私は私の言葉で、できるだけ丁寧に、私やあなたの得体の知れない淀みを掬っていきたいと思っている。 <見田村千晴> 【最終回に続く!】 ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 「 独白 」 2019年8月28日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆ニューアルバム『歪だって抱きしめて』 2019年10月9日発売 KCJT-0001 ¥2,800(tax out) <収録曲> 1. 禁煙席 2. 独白 3. ex. friend 4. 東京模様 5. あの日雨が降ったから 6. Woman 7. ユーモアが足りない 8. 銀河鉄道の夜 (※不可思議/wonderboy カバー) 9. 手のひらのラブソング

    2019/09/04

  • クアイフ
    気付けばナイフ持って立ってた、僕の指先は震えてた。
    気付けばナイフ持って立ってた、僕の指先は震えてた。

    クアイフ

    気付けばナイフ持って立ってた、僕の指先は震えてた。

    正論は正論としてそれよりも 君の意見を聞かせて欲しい (加藤千恵)  こちらは、歌人・加藤千恵さんの短歌集『ハッピーアイスクリーム』の一首。今日のうたコラムでは、この短歌を受け取った上で、じっくり聴いていただきたい新曲をご紹介いたします。2019年8月28日に“クアイフ”がリリースしたミニアルバム『URAUE』に収録されている「いたいよ」です。この歌は、彼らが初めて“いじめ”をテーマにした楽曲。 気付けばナイフ持って立ってた 僕の指先は震えてた 悔しさと虚しさの狭間で 「やめなさい」「落ち着きなさい」とか 冷ややかに諭した先生 いつの間にか 僕が悪者? 痛いよ 痛いよ 痛いよ 仕返し 傷付けても 涙が胸に染みるよ 怖いよ 怖いよ 怖いよ たくさんの視線の中で 誰一人 僕の孤独に気付かなかった あの日 「いたいよ」/クアイフ  まず、冒頭で描かれているのは<気付けばナイフ持って立ってた僕>の姿です。いじめられ続けて、悔しくて、虚しかったけれど、ただ我慢に我慢を重ねてきたであろう主人公。もしかしたら<ナイフ>は心のお守りとして、常に隠し持っていたのかもしれません。しかしついにある日、精神に限界が訪れ、理性より先に“身体”が動き出したのです。  その<僕の指先は震えて>いて、本音をうまく言葉にするなんて、まだ怖くてできなかったはず。でも<ナイフ持って立ってた>胸の内にあったのは“変わりたい”という強い想い。そして、思い切って踏み出した一歩で、誰かひとりでも“変わってくれ”という切実な願い。ですが、無情にも、聞こえてきたのは「やめなさい」「落ち着きなさい」と冷ややかに諭す先生の声、目にしたのは傍観者たちの<たくさんの視線>だけでした。    きっと<あの日>は<いつの間にか 僕が悪者>として扱われ、収拾されていったことでしょう。そんな<僕>のやり場のない想いが、サビでは<痛いよ 痛いよ 痛いよ>と叫びに変わって溢れ出します。孤独の痛み。無力な子どもである痛み。誰にもわかってもらえない痛み。自分を否定され続ける痛み。何かを変えようとしたからこその痛み。 隠されたノートに書かれた みんなが嫌いな僕のところ 母が「可愛い」と撫でた頬のほくろ まるで玄関先の家族写真 額縁ごと踏まれた気分 何かが弾け飛んだ音がしたよ 窓の向こうのひつじ雲 教科書通りの空 恨んで 僕は明日さえ見えないけど あぁ 自分を信じてた 「いたいよ」/クアイフ  さらに、いじめとは、誰かにとっての大事なひとを傷つけるもの。また、いじめられている本人は、自分を大事にしてくれているひとまで“自分のせい”で傷つけているような気持ちになるものなのだと、伝わってきます。つまり、誰かをいじめることは、そのひとの<玄関先の家族写真 額縁ごと>踏みつけるような行為と同じくらい残酷なのです。    だからこそ<痛いよ>には、自分を大事に思ってくれるひとに対する<痛いよ>も含まれているのでしょう。ただし、何がどんなに痛くとも、明日さえ見えなくても、あの頃の<僕>は<自分を信じて>いました。自分を信じ続ける“痛み”を伴いながら<ナイフ持って立ってた>のです。生きているからこその“痛み”が確かにそこにはありました。 窓の向こうのひつじ雲 見慣れた無情な空 横目に 僕は大人になっていた いつから変わっていた? 居たいよ 居たいよここに居たいよ 一人ぼっちは嫌だよ それなら自分殺して 笑うよ 笑うよ 笑うよ たくさんの傷を負った あの日から 何を手にして何を失ってきた? わからないよ 「いたいよ」/クアイフ  さて、時は流れ、ここから歌詞には<大人になっていた>主人公が描かれてゆきます。あの頃の<痛いよ>が<居たいよ>に変わっているのがわかりますね。痛みを伴ってでも自分を信じたい。それがかつての想いでした。しかし今、そんな想いは<殺して>、意思なんて犠牲にして、無理にでも笑って、そして“みんなの中に居る”という生き方を<僕>は選んだのです。果たしてこれは、間違いなのでしょうか。正しいのでしょうか。 気づけばナイフ持って立ってた 彼の指先は震えてた 悔しさと虚しさの狭間で 「やめなさい」「落ち着きなさい」とか 冷ややかに諭すのは僕 少年がこっちを睨んでる 「いたいよ」/クアイフ  歌の終盤。皮肉にも<僕>は今、あの頃<冷ややかに諭した先生>側の人間になっております。痛みは消えても<たくさんの傷>の痕は消えていないはずの心。だから<少年>の想いは痛いほど理解できるでしょう。でも、理解できるからこそ、現実が甘くなかったことを思い知ったからこそ、<冷ややかに諭す>しかないのではないでしょうか。それに<僕>はもう<一人ぼっちは嫌だ><ここに居たい>という想いが一番なのです。    では、かつて<僕>を<冷ややかに諭した先生>はどうだったのでしょうか。さらに<たくさんの視線>のなかの一人はどうだったのでしょうか。彼らもまた<痛いよ>と<居たいよ>の狭間で揺れていたとも考えられるのかもしれません。では<僕>はどうすればよかったのでしょうか。何が正解なのでしょうか。みなさんはこの歌を聴いて、何を感じますか?『正論は正論としてそれよりも 君の意見を聞かせて欲しい』。 ◆紹介曲「 いたいよ 」 作詞:内田旭彦 作曲:内田旭彦 ◆ミニ・アルバム『URAUE』 2019年8月28日発売 ESCL-5269 ¥2,315(税別) <収録曲>  1. 337km 2. いたいよ 3. Parasite 4. クレオパトラ 5. ハッピーエンドの迎え方 6. 桜通り 7. 自由大飛行 8. Viva la Carnival

    2019/09/03

  • 木村カエラ
    増えたシワの数も、小さな声で耳打ちをして。
    増えたシワの数も、小さな声で耳打ちをして。

    木村カエラ

    増えたシワの数も、小さな声で耳打ちをして。

    私はどこに流れてもいいんだ。 そこでいいふうにしていくから そしてどんどん思い出を作り続ける。 それで、死ぬときは、持ちきれない花束みたいな きれいなものを持っていくの。 (よしもとばなな『海のふた』より引用)  みなさんは、年を取ることって「楽しい!」と思いますか? それとも「嫌だなぁ…」と思いますか? 容姿や体力が衰えていくのを実感すると、つい後者になってしまいがち。でもきっと、冒頭でご紹介した言葉のように、生きるとは『思い出を作り続け』て『持ちきれない花束みたいなきれいなもの』を増やしていくことなのではないでしょうか。    そう考えるとなんだか、年を取るのも悪くないと感じられてきますよね…! さて、今日のうたコラムでは、わたしたちがより楽しく、気持ちよく、カッコよく、年を重ね生きていくためのパワーを与えてくれる楽曲たちを、ご紹介いたします。まず最初にオススメしたいのは、2019年7月31日に“木村カエラ”がリリースした新曲です。 おばさんになったこと 泣けない日が増えたこと 自分より大切なものができたこと 治りの遅い傷や 時に唄い出す身体 今しかないわたしを わたしで抱きしめて 「 Continue 」/木村カエラ  ニューアルバム『いちご』の収録曲であり、作詞作曲は“あいみょん”が担当。テーマはまさに“年を取ること”でしょう。歌詞には、様々な自身の変化が綴られております。たとえば<おばさんになったこと>。それは<おばさんになった>自分を受け入れられた証であり、さらに<おばさんになった>と胸を張って言えるようになった証でもあり。  また<泣けない日が増えたこと>は、大人ならではの忙しさや疲れによって、悲しみや悔しさが涙になることができない現実を表しているのかもしれません。ただ一方で<自分より大切なものができた>からこそ“強くありたい”という想いが生まれ、それが“<泣けない>=泣かない”という意志に繋がっているようにも思えます。 ねぇ わたし 昨日のわたし 無理して笑ったその理由を教えてよ ねぇ わたし 昨日のわたし 増えたシワの数も 小さな声で耳打ちをして わたしに知らせて 生きてる証を 「 Continue 」/木村カエラ  そして<増えたシワの数>もまた“年を取ること”の象徴です。思い切り笑って、思い切り怒って、感情が動いた分だけ、シワは増える。その<増えたシワの数>こそ『持ちきれない花束みたいなきれいなもの』だと言えるのではないでしょうか。だからこそ<わたし>は、心身のあらゆる変化を<生きてる証>として愛おしく思っているのです。愛おしい<生きてる証>をひとつも見過ごしたくないのです。    容姿や体力が衰えていく変化さえ、おもしろく捉えらることができたなら、生きていくことってどんどん楽しくなってゆく気がしますね。では、ここからはさらに、木村カエラ「Continue」と同じく“年を取ること”をテーマにした楽曲を一挙、ピックアップ…! 10代 憎しみと愛入り交じった目で世間を罵り 20代 悲しみを知って 目を背けたくって 町を彷徨い歩き 30代 愛する人のためのこの命だってことに あぁ 気付いたな 季節は過ぎてそれぞれの空 オマエこの頃 何想う 「 俺たちの明日 」/エレファントカシマシ 10代 愛とは 互いにじっと見つめ合うことで 20代 愛とは 同じものを好きでいることでした 30代 愛とは それを続けるための努力で そして今 愛とは 違いを愛しく感じることだと思う 「 20年目の手紙 」/平松愛理 一年が過ぎるのが やけに早く感じて 「歳かなぁ」なんて自嘲したり 手つかずの夢があったり 恐いものなんて 今よりずっとなかった 二十代のあの情熱とは 今は違うけど 憧れたものには もうなれないとしても この道を歩いてみよう 旅を続けよう 「 何度でも花が咲くように私を生きよう 」/福山雅治 気がつけば五十路を 越えた私がいる 信じられない速さで 時は過ぎ去ると 知ってしまったら どんな小さなことも 覚えていたいと 心が言ったよ I say it's fun to be 20 You say it's great to be 30 And they say it's lovely to be 40 But I feel it's nice to be 50 「 人生の扉 」/竹内まりや 自分がこんな年になる 日が来るなんて思わずに来た 自分はいつまでも元気で 何でも出来ると信じ込んでた 50を過ぎた友人に どんな気持ちか聞いたときに 出来ることと出来ないことが わかるから楽しいと笑ってたっけ どんなに願ったところで 好きなことは好きで嫌なことは嫌だ 自分の行きたい場所に行こう 正しくても間違っていても 「 朝が来るよ 」/槇原敬之  10代、20代、30代、40代、50代、60代…。どの歌詞からも、その時々の“環境”があり、その時々の“信念”があり、その時々の“自分”がいることがわかります。そして、いろんな変化を経た上で、現在の自分が何を大切にしたいのかという想いもまっすぐに伝わってきますよね。年を取ることって楽しいかも。そう思わせてくれる楽曲たちです。    いつか“おばさん”や“おじさん”になったとき。もし、自分より若い世代の子に「年を取ることって楽しい?」と訊かれたなら、胸を張って「楽しいよ!」と答えられる大人でありたいですね…!この記事を読んでいるあなたも<生きてる証>を存分に味わいながら、健康に年を重ねてゆくことができますように。

    2019/09/02

  • erica
    歌詞を“縦読み”したら、実はある言葉が隠れている…。
    歌詞を“縦読み”したら、実はある言葉が隠れている…。

    erica

    歌詞を“縦読み”したら、実はある言葉が隠れている…。

     今年、5ヶ月連続配信リリースを発表した“erica”が、2019年8月23日に第1弾配信シングル「タテヨミ」をリリースしました。これまで様々なタイプの【告うた】を届けてきた彼女。ちなみに【告うた】とは、大好きな相手への「好き」の気持ち、感謝や今だから言える思い、さらに未練や後悔などを、歌で“告白”する内容となっております。そしてこの度、新たな【告うた】が誕生したのです。 あなたに あなたに 伝えたいの 面と向かってきっと言えないから 見つけて 見つめて 心のひとみで さがして 私の 秘密の言葉 「タテヨミ」/erica  聞いてほしいことがある。でも面と向かっては言えないし、ストレートに文字にするのは恥ずかしい。そんな恋するあなたに聴いてほしいのが「タテヨミ」です。この楽曲に込められた想いとは…? さて、今日のうたコラムでは注目の新曲について“erica”本人が歌詞エッセイを執筆! なんと5ヶ月連続配信リリースに併せ、歌詞エッセイも5ヶ月連続掲載が決定。今回はその第1弾となります。是非、歌詞と併せて、ご熟読&ご堪能ください…! ~「タテヨミ」歌詞エッセイ~  学校の廊下・放課後の教室・帰り道の夕焼け・駅前のコンビニ・集合場所のファーストフード…。そこにはいつも女子たちの「恋」にまつわるいろんな話題が絶えない。 「あの子が何組のあの子のこと好きなんだって」 「このカップルめっちゃお似合いだよね?」 「バイト先の先輩がさぁ…」  そんな話は尽きず、時を忘れてしまうほど楽しくて、盛り上がる。そして、そこに寄り添うように「恋の歌」はいつもそっと流れている。時には励まし背中を押してくれ、時には一緒に泣き笑い側にいてくれる。「恋の歌」は一生懸命恋をする人に欠かせないものなのだ。  私はいままで「告白」をテーマに、自分の体験したことを書いたり、ファンの方から頂いたお悩みへのアンサーソングを作ったり、告白にまつわるいろんな曲「告うた」を作ってきた。その中で大切にしてきたことがいくつかある。その1つ…。 ==== “相手に求める” のではなく “自分が好きな自分"になる” ====  ということ。人と比べない。ライバルは自分なんだということ。失恋した日が恋の終わりじゃない。相手に“ありがとう”と心から思えた時が、本当にその恋から卒業できた日。そして、恋って楽しいんだってこと。好きな人に出会え、恋をするってそれだけで奇跡なんだってこと。そんな気持ちをこれからも歌にしていきたいと思っている。  そんな中で生まれたのが「タテヨミ」という新曲。聴いているだけでハッピーになれる。好きな人を想像して気分が上がる! そんな曲にしたいと思った。さらに、まっすぐ好きって気持ちを歌詞にするのもいいけど、聴けば聴くほど味が増す、そんな曲を作りたいと思ったのだ。  歌詞を“縦読み”したら、実はある言葉が隠れている。そのような歌詞を、ずっと前から考えていて、何回か打ち合わせでも提案をしていた。ただし“縦読み”だけを意識した曲にするのではなく、ちゃんと耳から流れる歌詞の世界観も大事にしたかった。    ゆえに「タテヨミ」として伝えたい言葉と、全体の歌詞の兼ね合いをうまく繋げるのに時間がかかった。でもだからこそ、普段だったら使わないような言葉の並べ方だったり、言い回しだったりが生まれて、自分の中の歌詞の幅が広がったのも新しい発見だった。  何よりこだわったのが、耳だけでこの曲を聴いた時も、聴いている人に「タテヨミ」の部分をきちんと分かってもらえることだった。タイトル名だけを伝えて、その他の情報は一切出さずに曲を聴いてもらい、どう感じたかをいろんな方から聞いたり、ポイントとなる部分を分かりやすく耳に残るような歌い方にしたり…。    普通に聴くと、ただの恋愛ソング。でも何度も歌詞を感じながら聴くと、秘密の言葉が浮かび上がる。そんな曲を作ったことがなかったので、勉強になることも沢山あったし、とても楽しかったのを覚えている。あとは、聴いていただいてこの曲が皆さんの耳にどう届くかという点だけ…笑。あなたの耳でどのように感じたかご感想をいただけたら嬉しいな、なんて。  そして、こっそり好きな人にメールで送ったり、カラオケで歌ってみたりして、相手にバレてしまうかもしれないドキドキ感も、この曲の醍醐味だと思う。是非、恋をしてる人にチャレンジしてほしいし、好きな人だけではなく、友達や家族など大切な人に贈る歌になれば嬉しい。 <erica> 【第2弾歌詞エッセイへ続く…!】 ◆紹介曲 第1弾「 タテヨミ 」 2019年8月23日配信リリース 作詞:erica 作曲:erica・nao ◆第2弾~第5弾「タイトル未定」 お楽しみに…!

    2019/08/30

  • Hilcrhyme
    最後に言わせて幸せだったと。
    最後に言わせて幸せだったと。

    Hilcrhyme

    最後に言わせて幸せだったと。

    君はいた確かにここに 愛してくれた 誰より深く 誓いの指輪も神の契りも この手にはないけど 君はいた確かにここに 愛してくれた 誰より深く 最後に言わせて幸せだったと 「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」/Hilcrhyme  2019年8月28日に“Hilcrhyme”がニューシングル『事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)』をリリースしました。昨年よりMC・TOCによるソロプロジェクトとして、スタートを切った新生“Hilcrhyme”初のシングルの表題曲は、初めて女性アーティストをフィーチャリングに迎え、ドラマ『わたし旦那をシェアしてた』主題歌として書き下ろされた楽曲です。    このドラマの主人公は“事実婚”ながら愛する夫(平山浩行)と幸せな日々を送っていたシングルマザー。しかしある日、夫が何者かにより殺害。すると、自分以外にも「私も妻だ」と名乗る女性が…。彼は20代(岡本玲)・30代(小池栄子)・40代(りょう)、3人のシングルマザーと同時に事実婚をしていたことが判明したのです。そして遺言や嘘を巡り、騙し合い励まし合い、幸せのため突き進んでいく、残された3人の女性たち…。 貴方の全てを愛したわ まるで子供のように無邪気に笑う その笑顔にどれだけ救われた 消えない過去の傷ごと包まれた 日々は続く 幸せな 君の隣 でもこの幸せが怖い 愛に溺れ自分 見失った 何も言わず 君はいなくなった 待ち侘びたわ あなたからの連絡 あれ私なにかした?って詮索 一人にしないで 寂しい嫌だよ 思い出だけ残さないで 「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」/Hilcrhyme  そんな“残された側”の気持ちを代弁するかのように描かれているのが、主題歌「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」です。よく歌詞を読んでみると、相手の表記が<貴方>、<君>、<あなた>と3パターンありますよね。これは、ドラマに登場する女性3人それぞれの想いではないでしょうか。つまり1曲に3人の<私>の本音が詰まっているということ。  まず描かれるのは、1人目の<私>の心模様。楽しかった記憶にすがり、ただ<子供のように無邪気に笑う>姿を浮かべ、自分が<どれだけ救われた>か、噛みしめる想い。さらに“あの笑顔”ではなくて<その笑顔>と綴っていることから、記憶はまだ遠い過去じゃなく、まるで今、目の前に存在するかのように感じられるものだと伝わってきます。    2人目の<私>は<いなくなった>という現実を、呆然と見つめているような印象です。一緒にいるときから<この幸せが怖い>と感じていた<私>は、心のどこかでこんな日が来ることを予感していたのかもしれませんね。3人目の<私>は、必死で現実を拒み、原因を考えている模様。でも押し寄せる<一人にしないで 寂しい嫌だよ 思い出だけ残さないで>という不安や孤独や悲しみに、今にも押しつぶされてしまいそう…。 君はいた確かにここに 愛してくれた 誰より深く 誓いの指輪も神の契りも この手にはないけど 君はいた確かにここに 愛してくれた 誰より深く 最後に言わせて幸せだったと 「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」/Hilcrhyme  しかし、Hilcrhymeと仲宗根泉の声が重なるサビでは、3人の<私>の想いがひとつに重なっているように思えます。大切なひとが突然いなくなって、抱く感情はそれぞれ。それでも、確かにここに<君はいた>こと。自分を<愛してくれた>こと。そして何より<幸せだった>ということ。それらはきっと、どの<私>にも共通しているのです。 じゃあまたね 愛した貴方 今はもう違う場所にいるけど 私は進むわ 君はいた確かにここに 愛してくれた 誰より深く 誓いの指輪も神の契りも この手にはないけど 君はいた確かにここに 愛してくれた 誰より深く 最後に言わせて幸せだったと それだけは消えない確かなモノ 「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」/Hilcrhyme  尚、HilcrhymeのTOCはこの曲について「別れを経てもネガティブにならず、それを糧とし、前に強く進む女性像を描きました」とコメントをしておりました。その“前に強く進む女性像”が、歌が進むにつれ、どんどん色濃くなってゆくのが、この「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」なのです。  みなさんも、大切なひとが突然、いなくなってしまったことってありませんか? SNSを急にブロックされたり、着信拒否されたり、婚約破棄されたり、亡くなってしまったり…。その現実はどうしようもなく苦しいですよね。でも、今まで過ごした時間や、もらった愛はなかったことにはなりません。<それだけは消えない確かなモノ>だから。いつかはあたたかい思い出を胸に<私は進むわ>と言える日が、あなたにも訪れますように…! ◆紹介曲「 事実愛 feat. 仲宗根泉(HY) 」 作詞:TOC 作曲:TOC・Singo Kubota (Jazzin'park) ◆New Single「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」 2019年8月28日発売 初回限定盤 POCE-12125 ¥1944(税込) 通常盤 POCE-12126 ¥1200(税込) <収録曲> 1.事実愛 feat. 仲宗根泉(HY) 2.二人の女 3.事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)-Original Instrumental- 4.二人の女 -Original Instrumental-

    2019/08/29

  • リリィ、さよなら。
    初めてそのテーマを見つめるきっかけになった曲なのだ。
    初めてそのテーマを見つめるきっかけになった曲なのだ。

    リリィ、さよなら。

    初めてそのテーマを見つめるきっかけになった曲なのだ。

    2019年8月7日に“リリィ、さよなら。”がニューアルバム『最終話までそばにいて』をリリースしました。彼がこのアルバムのコンセプトに据えたのは【花】です。収録楽曲の1曲1曲を花になぞらえ、楽曲を聴き終えたあと、ブックレットの最後に添えた花言葉を読むと、その曲の歌詞が色彩を放つ仕掛けになっているんだとか!  切ない歌詞と綺麗なメロディで聴く人の涙を誘う、彼ならではの世界を堪能できる楽曲はもちろん。これまでとガラっと変わった一面を魅せる楽曲も加わった全7曲が収録されております。さて、今日のうたコラムではそんなアルバムについての歌詞エッセイを、リリィ、さよなら。本人が執筆!4週に分けて記事をお届けしてきました。今回は プロローグ 、 アルバムセルフライナーノーツ【第1章】 、 【第2章】 、に続く【最終章】をご堪能ください…! 『最終話までそばにいて』 ~セルフライナーノーツ【最終章】~ 【M6. Clover 】  この曲は、リリィの中では珍しく「旅立ち」や「仲間」への熱い想いを歌った曲である。そもそも自発的に書こうとしたものではない。人からのリクエストで生まれた。  大学一年生の時に入ったサークルに憧れの先輩がいた。美しく、聡明で、先輩後輩男女問わず慕われ、僕のような人間にも明るく接してくれるとても素晴らしい人だった。19~20そこらの、いつも集まりの隅っこにいるような内気男子の僕には眩しすぎる先輩であった。ある日、たまたま先輩と帰りの電車が同じで、初めてゆっくり話をした際、先輩が卒業する時に歌を作ってほしいとのお願いがあった。 即決。  実に単純である。憧れの先輩からの卒業最後のお願いとなれば二つ返事である。もうそこから帰宅して、その日のうちに出来たのがこの歌だ。しかし決してラブソングではない、まあラブソングでもいい。どっちでもいい。自由に聴いてほしい。憧れの先輩を通して、それまで誰かの「卒業」や「旅立ち」に何も感じなかった僕が、初めてそのテーマを見つめるきっかけになった曲なのだ。  大切な人たちとのかけがえのない青春の物語が終わり、またそれぞれ歩き出す。生きていく上で当たり前のことだが、それだけじゃ割り切れない熱い気持ちを、これでもかと詰め込んだつもりだ。 大切にするよ 君と過ごした名もない日々 大切にするよ 君の隣で見た景色を 僕らだけの秘密さ  ここに青春が象徴されている気がするのだ。人から見たら取るに足らない時間、笑い、涙、衝突、怒り。その全てがどれほど価値のあるものか、それは「僕ら」だけが知っていればいいのだ。名前なんかなくていい。だけど確かに胸の中にずっと宝物のようにしまって生きていく。それが青春である。究極の内輪ネタである。それでいい。  聴いてくれる人の大事な人に贈ってほしい花束のような曲になった。この曲から今回のアルバム作りが始まったのだ。ちなみに余談も余談だが、なぜタイトルがクローバーかと言うと、前述の憧れの先輩と僕が過ごした学校の校章が“ペンマーク”というクローバーの形にそっくりなものだったからである。ペンは剣よりも強し。そう、青春とはやはり内輪ネタなのだ。 楽曲の花…「Clover」 花言葉…「約束」 【M7. モラトリアム 】 熱が出たからこんな夢で 目が覚めてしまったのかな 懐かしい君に手を引かれて 名前を呼んだ瞬間 朝が来た  まさに去年の冬、熱にうなされていた朝の出来事である。体調が悪い時は、とかく変な夢、怖い夢、悲しい夢を見やすい。少なくとも僕はそうだ。この日はもうずっと昔に好きだった人の夢であった。  僕に恋を教えてくれた人だった。優しくて、冷静で、だけど音楽を愛するパッションを持った素敵な人だった。好きで好きで仕方なかった。しかし自分の幼さゆえの失敗ばかりで最後は愛想をつかされてしまった。  不思議だった。もう何年も前の話で、忘れられたと思っていたのに。僕は夢の中で、相変わらずその人が好きで好きで仕方ないほどに恋をしていたのである。「人って一度愛してしまったら、簡単には忘れられないんだな。」と、そのとき自分でもよくわからない気持ちのまま、ぼんやりと朝方に思ったのだ。そして生まれた歌がこの曲である。  子供でも大人でもない、そんな不安定な時期の若者のありのままを書きたかった。聴き手にも、たまには昔の恋でも思い出しながら聴いてほしい。そんな少しビターで甘い一曲である。 楽曲の花…「サクラソウ」 花言葉「初恋」 【最後に…】  今回この企画をいただいて、初めてセルフライナーノーツというものを全曲分、真剣に書かせていただいたのだが、本当に貴重な経験となった。アルバムというものは、制作期間中はバタバタなので、意外と自分の楽曲を落ち着いて見返す時間がないものである。僕はそうだ。  歌は、聴き手が自由に想いを重ねて聴くことが一番だと思っているので、これはセルフライナーノーツでもあり、僕という人間ひとりの個人的感想でもある。タイトルに『最終話までそばにいて』と名付けたアルバムだが、その言葉通り、少しでもこれを読んでいただいたあなたの人生のお供にしていただければ、作者としては僥倖である。 最後に一つ言わせてほしい 「本当にめっちゃいい曲詰まったアルバムだから聴いて!お願い!マジで!!!(大声)」 以上。 それではこれにて連載はお終い。 長文、乱文に付き合ってくれてありがとう。 またお会いしましょう。 <リリィ、さよなら。 ヒロキ> ◆ニューアルバム『最終話までそばにいて』 2019年8月7日リリース POCS-1816 ¥1800+税 <収録曲> 1.その手にふれたあの日から 2.甘い生活 3.Lovin’you? 4.Your best friend 5.コールドスリープ 6.Clover 7.モラトリアム

    2019/08/28

  • イチオシ!
    甘い匂いに誘われてしまう、どうしようもない心をこう例えるか!
    甘い匂いに誘われてしまう、どうしようもない心をこう例えるか!

    イチオシ!

    甘い匂いに誘われてしまう、どうしようもない心をこう例えるか!

     歌詞愛好家のみなさま。歌ネットにて、毎月お届けしている 『言葉の達人』 はチェックされていますか? 作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。8月は、有森聡美さんがご登場。現在、第186回を迎えております。    さて、今日のうたコラムではそんな『言葉の達人』から、達人たちが教えてくれた“「やられた!」と思わされた1曲”を、ダイジェストでご紹介! 【前編】 に続く【後編】では、さだまさし、中嶋ユキノ、杉山勝彦、宮川弾、高橋優、仲宗根泉(HY)、槇原敬之、7名の回答をご堪能ください…! <さだまさし> 石川さゆり「 津軽海峡・冬景色 」です。出だしの<上野発の夜行列車 おりたときから 青森駅は雪の中>という風景描写がとにかく素晴らしい。そのあとの<北へ帰る人の群れは 誰も無口で 海鳴りだけをきいている>には雪国に住む人々の心や姿が目に見え、海鳴りが聞こえ、寒さまで伝わるようです。素晴らしい作品です。 <中嶋ユキノ> 中島みゆきさん「 糸 」です。人と人が巡り会うこと、生きていくこと、繋がっていくこと、それを短い文章の中でとても繊細に描かれた楽曲だと思います。 <杉山勝彦> Mr.Childrenの「 GIFT 」です。この曲は、NHK北京オリンピック・パラリンピック放送テーマソングとしてリリースされた楽曲なのですが、<降り注ぐ日差しがあって だからこそ日陰もあって そのすべてが意味を持って 互いを讃えているのなら もうどんな場所にいても 光を感じれるよ>という歌詞に感動しました。 オリンピックというと「金メダルを目指せ!」という歌詞が多くなりがちですが、勝者になれる人の数は少数で限られているけれど、人生をかけて挑戦すること、技を競うことの価値はそれだけではなくて、ある種、陰になった人にも光を感じられるということを歌っていて、その時代と当時の自分の気持ちと一致して、すごく感動して素晴らしいなと思って毎日聴いていました。 <宮川弾> 幼いころから聴こえてくる音楽にドキドキさせられてチェックすると大抵、康珍化さんの作詞でした。堀ちえみさんの「 稲妻パラダイス 」にでてくる<消えない陽焼け 残してあげる>という詞は、まさに消えないものをボクの心に残しています。言葉だけ見るとサディスティックなのに、メロディーと合わさるとかわいい。 歌詞に於けるこういう感覚って現代ではままあると思うのですけど、1984年のボクはテレビを凝視したまま動けませんでした。今にして思うと、堀ちえみさんの健康的なルックスもイメージとして加味したうえでの作詞なのでしょうね。もうずるいし、脱帽です。改めて読んでみて、がっつり影響を受けていることに自分でも驚いています。 <高橋優> 槇原敬之さんの「 軒下のモンスター 」。よく聞く“君のことが好き”的ラブソングとはひと味もふた味も違う、でも正真正銘のラブソング。孤独な愛のかたち。こういう言葉を楽曲に落とし込める技術に僕は鳥肌が立ちました。 <HY・仲宗根泉> 槇原敬之さんの「 ズル休み 」です。好きな人に想われない切なさを書かれているだけかと思いきや、詞の中の主人公もまた誰かに想われているんだよ。って、まるで小説のようなどんでん返しの詞にハッっとさせられました。 <槇原敬之> aikoちゃんの「 カブトムシ 」。すごいなぁ~と思いますね。甘い匂いに誘われてしまう、どうしようもない心をこう例えるか!って、感動しましたね。ほかにもユーミンだったり中島みゆきさんだったり、いろんな人のいろんな歌詞に「やられた!」がありますよねぇ。そういうものに触れられるとき、至福の喜びを感じますね。  いくつもの楽曲で、わたしたちの心を揺さぶってきた達人の心をも、揺さぶった名歌詞の数々。どんなところに「やられた!」のか、その視点や捉え方を読むのも、また面白いですよね。もちろん、9月に登場予定の“あの達人”にも“「やられた!」と思わされた1曲”を訊いておりますので、是非その回答もお楽しみに!

    2019/08/27

  • イチオシ!
    存在への強い肯定がそこにはあって、優しい歌詞だなと。
    存在への強い肯定がそこにはあって、優しい歌詞だなと。

    イチオシ!

    存在への強い肯定がそこにはあって、優しい歌詞だなと。

     歌詞愛好家のみなさま。歌ネットにて、毎月お届けしている 『言葉の達人』 はチェックされていますか? 作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。8月は、有森聡美さんがご登場。現在、第186回を迎えております。    さて、今日のうたコラムではそんな『言葉の達人』から、達人たちが教えてくれた“「やられた!」と思わされた1曲”を、ダイジェストでご紹介!まず【前編】では、有森聡美、Sally#Cinnamon(Heavenstamp)、平義隆、玉井健二、志倉千代丸、大宮エリー、水野良樹(いきものがかり)、7名の回答をご堪能ください…! <有森聡美> 作詞家として、やられた!と言うより、オーディエンスとして聞いてやられたのは、小田和正さんの「 君住む街へ 」です。私の事だわって、ほんとファンと同じ目線で聞いています。あの歌詞と小田さんの声や、生きて来た歴史からの優しさを感じます。ユーミンの世界観も大好きです。沢山影響もパワーももらったし、なにより夢をもらいました。玉置浩二さんにもずっと歌詞を書いてみたいと思っています。そして、やられた!と思わせたいです。 <Sally#Cinnamon(Heavenstamp)> 井上陽水さんの「 最後のニュース 」。最初に知ったのは奥田民生さんがカバー曲として演奏していたライブ映像でした。人間が向き合い続けなければならない問題に正面から、壮大かつ身近な表現で歌詞にされていることに衝撃を受けました。決して遠い場所での問題ではないのだよと、訴えかけられている気持ちになったことを覚えています。 <平義隆> かぐや姫の「 神田川 」です。はじめて聴いた当時小学生でしたが、経験したことないアパート暮らしや銭湯をリアルに想像できたことが凄いと今でも思います。 <玉井健二> これは!と思った種はたいていは野田洋次郎さんに取られています。その上でこの人には決して叶わないんだな、と感じさせられたのがYUKIちゃんの「 Home Sweet Home 」。努力で補えない圧倒的な才能があることを実感としてこの時知りました。 <志倉千代丸> やられた!というより「流石すぎる!」に近いのですが、ピンクレディーさんの「 サウスポー 」ですかねぇ。楽曲の構成の中で、要所要所にある強気な面、弱気な面、伝わってくる緊迫感。構成と歌詞がリンクしているのはもちろん、言葉のハマリも流石の一言です。まるでミュージカルのようにドラマが見えてくる様は、楽曲という枠を越えた何か別ジャンルの作品にも思えます。 <大宮エリー> 松本隆先生の詩はもう全部好きですよ。< 渚のバルコニーで待ってて ラベンダーの 夜明けの海が見たいの >なんて、書けないですよー。 <水野良樹> 「やられた!」という言葉のニュアンスとは違うかもしれませんが、椎名林檎さんの「 ありあまる富 」の歌詞は最近、読み直してみて、とてもすばらしい歌詞だと感動しました。存在への強い肯定がそこにはあって、優しい歌詞だなと。言葉づらだけになってしまいがちな応援ソングより、よっぽど励まされました。 【後編】へ続く!

    2019/08/26

  • miwa
    ああすれば、こうすれば、こうしたらなんて。
    ああすれば、こうすれば、こうしたらなんて。

    miwa

    ああすれば、こうすれば、こうしたらなんて。

     2019年8月14日に“miwa”がニューシングル「リブート」をリリースしました。タイトル曲は金曜ドラマ『凪のお暇』主題歌として書き下ろされた楽曲。毎回ドラマのエンディングのたびに、視聴者から「この歌が流れるタイミングが最高!」との称賛の声がSNSに上がっております。尚、歌ネットの注目度ランキングでも首位を記録した人気曲です。 ああすれば こうすれば こうしたら なんて考えて 進めないでいるなら 複雑な感情 全部捨てちゃえ 「リブート」/miwa  ドラマ『凪のお暇』の主人公(黒木華)は、OLとして働いていた28歳の女性。いつも人の顔色を伺い、場の空気を読みすぎ、無理をした結果ある日、心身ともにダウン。それをきっかけに「私の人生、これでいいのだろうか…」と自分を見つめなおし、会社を辞め、マンションも解約し、付き合っていた彼氏を含め、すべての人たちとの連絡を絶ち、人生をリセットすべく新生活をスタートさせるところから物語は展開していきます。  そして、彼女を追いかける、元カレ(高橋一生)はちょっと性格に難あり。また、彼女の新たな住居であるアパートの隣人(中村倫也)も、一見やさしいけれど、元カレとは違うタイプの難あり。現在、3人の三角関係は周りの人たちを巻き込みながら、複雑にこじれつつ進行中です…。さて、そんな3人のどの立場で聴いても響くのが、miwaの主題歌!  miwaのブレスを合図に、思いきり吐き出される冒頭のフレーズ。ドラマの登場人物はまさに<ああすれば こうすれば こうしたら>とそれぞれの“たられば”を考えては<複雑な感情>に囚われ<進めないでいる>人ばかりですが、わたしたちにも、そんなときってありますよね。でも“選ばなかったほう”ばかり考えていても<時間まで無駄>でしょう。 ああすれば こうすれば こうしたら なんて考えて 時間まで無駄でしょ 胸の痛み 蹴飛ばし舞い上がれ 愛してる 愛してる 愛してる なんて 本音さえ言えないでいるなら 複雑な感情 全部捨てちゃえ 「リブート」/miwa ああしたい こうしたい こうしたら なんて言わなくちゃ 叶わないままでしょ 高いヒール 蹴散らし 舞い上がれ 信じてる 信じてる 信じてる 私は私 幸せになるんだ 複雑な感情 全部捨てちゃえ 「リブート」/miwa  だからこそ、miwaはこの歌で、すべての“たられば”人間に「リブート」するパワーを与えようとしているのです。あえて「リセット」ではなく“「リブート」=再起動”という言葉を使っているところも重要。まず「リセット」とは、状況を切り替えるために、いったんすべてを最初からやり直すこと。ゼロになることを意味する言葉だと思います。  きっとドラマの主人公も“全部リセットしたい!”という気持ちだったはず。だけど実際のところ、自分のすべてをなかったことにするのは難しいですし、今までの人生にだって少なからず価値はあるはず。ゆえに“不可欠でない要素=<複雑な感情>”だけを<全部捨てちゃえ>とmiwaは歌うのはないでしょうか。    つまり自分の核となる部分、大切にしたいところは残したまま“「リブート」=再起動”して、新たに仕切り直していこうと伝えているのです。たとえば<愛してる 愛してる 愛してる>という本音や<ああしたい こうしたい>という願望。それらは失わないように、ここから<私は私 幸せになるんだ>という意志を持って、歩き出すのです。 これで良いの 間違ってないよね 微妙なメリット 気まずいサルート 華麗にイグジット 共に笑うアミーゴ ああすれば こうすれば こうしたら なんて考えて 時間まで無駄でしょ 胸の痛み 蹴飛ばし 舞い上がれ 愛してる 愛してる 愛してる なんて 本音さえ言えないでいるなら 複雑な感情 全部捨てちゃえ 「リブート」/miwa  ときには<間違ってないよね>と誰かに尋ねたくなるときもあるでしょう。でも<複雑な感情>を全部捨てちゃって、ぐずぐずした人間関係から<華麗にイグジット>すれば、そこには新たな<共に笑うアミーゴ>が待っているはず。笑顔になれるはず。そうやってmiwaは「リブート」に伴う不安も、強く吹き飛ばすかのようにこの歌を歌います。    ああすれば、こうすれば、こうしたら、と今日も悩んでいるドラマの登場人物たちにとって、そしてあなたにとって、miwa「リブート」がお守りになりますように。やがて<胸の痛み 蹴飛ばし 舞い上がれ>る日がやってきますように…! ◆紹介曲「 リブート 」 作詞:miwa・katsuhiko sugiyama 作曲:miwa

    2019/08/23

  • イチオシ!
    7組のアーティストの“スランプ脱出法”をご紹介…!
    7組のアーティストの“スランプ脱出法”をご紹介…!

    イチオシ!

    7組のアーティストの“スランプ脱出法”をご紹介…!

    じっと耐えて嵐が去るのを 待ったほうがいい時期というのがある。 目の前にある障害物を避けて 遠回りしたほうがいい場合も多々ある。 (真梨幸子『クロク、ヌレ!』より引用)  心が挫けそうなとき、ピンチに遭遇したとき、スランプに陥ったとき、あなたならどうやってその時期を抜け出しますか? 今日のうたコラムでは、そんなときの参考になりそうな言葉をアーティスト過去インタビューよりご紹介。彼らには、どんなスランプがあるのか or あったのか。それらをどのように越えているのか。7組の回答に注目です…! <井上苑子> 曲作りのスランプは常にあります(笑)。歌詞が毎回わりと行き詰まるんですよ。タイアップの曲だとテーマがあるじゃないですか。それに沿って自分があまり深掘り出来ないときに、かなり模索しますね。また1から考え直したりとか、まったく違う視点からみるようにしてみたりとか、そうやって最終的にはなんとか抜け出します。 <MACO> スランプに陥るのは、歌詞を書くときが多いです。みんなからあんまり「良いね!」って言われないから…(笑)。まだ曲が世に出る前に、MACOがその歌詞を初披露すると、スタッフのみんなが「ん?」ってなるときが結構あるんですよ。だから今もその瞬間が一番緊張しますね。でもファンのみんなが聴いて「ん?」ってなる状況が一番怖いので、リリースされる前にものすごく試行錯誤します。 アルバム『FIRST KISS』や『love letter』あたりでもかなり悩んでいましたね。私はいつも100%自分が書きたいことを書いているんですけど、ニュアンスとか言い回しが、他の人に伝わりづらいことも多いみたいで。この表現じゃダメなんだって気づかされるというか。そういうときに「こうしたらもっとたくさんの人に届くよ」というアドバイスをいただいて、頭を悩ませながら改善していきますね。 自分の言葉で伝えたい。でもたくさんの人に届けたい。その両方のバランスを取るのは大変ですけど、今は一番そこが大切ですかね。自分が信頼できるスタッフの方たちと、その歌詞の最高到達地点まで行けるように作り上げてゆきたいという気持ちが、最近より強くなっています。 <阿部真央> スランプ期は結構ありまして。とくに3枚目のアルバム『素。』のときは、それまでの2枚のアルバムでもう学生時代のストックを使い切ってしまっていたので、アルバムのために新たに曲を作るということを初めてやったんです。 まずストックがない不安があったし、ツアーなども並行してやっていくなかで書く時間もマインドもなかなか作れなくて。そのときは相当大変でしたね。でも結果的には、その疲れた気持ちを曲にした「モットー。」が生まれたりもしたので、わりと1、2枚目のアルバムと同じように、歌詞に“素”を出せたなという感じはしますね。 <コレサワ> スランプ期には、書けないというより、降りてこない。私は書こうと思って書くのではなくて、自然と曲ができるタイプなんです。でもメジャーデビューをして、初めて“締め切り”がある状況になって。そこで「あ~出てこないなぁ…」という壁にぶち当たりました。でもまぁ「出てこなくても、死ぬわけじゃないから!」って思っています。 あまり自分を追い詰めずに「できなかったらしゃーないわ!」くらいの感じでいる。そうやって気持ちが楽になった時にこそ、曲って降りてくることが多いので。曲作り以外でも、楽になりたいときとか、すごく嫌なことがあったときとか、明日は行きたくないなぁってときには「でも死ぬよりはマシやから、頑張ろう!」って思うようにしています。自分の心に逃げ場をひとつ作っておくことって大事なんですよね。 <柴田淳> 2014年12月に『バビルサの牙』というアルバムをリリースしたんですけど、その1年半くらいほど前に大失恋をしまして…。その痛手から目を背けるために1年半で3年分くらいの仕事を詰め込んでしまったんです。仕事をしている時は、楽しいし必死だから、傷ついていたことなんて忘れていられる。だから悲しみに向き合わずに過ごせたんです。でも、それが終わった瞬間に、一気に身体も心も壊れてしまったんですよね。 しかも、痛みを感じないようにしていた期間が長かったからこその反動っていうんですかね、ものすごく膿がたまっているような状態で。時間が解決してくれるどころか、傷の量がかなり増えてしまっていて…。その状態で『バビルサの牙』を作らなければならない時期になり大変でした。バビルサは、ジャケットを見るだけで今でも涙がこぼれてきてしまう、本当にボロボロの私が形になっています。 初めて本気で「仕事やめようかな」って思いました。なんで歌っているんだろう、なんで仕事しているんだろう、なんで生きているんだろう…ってところまでいってしまって。それは単に「死にたい」とかそんなことではなくて、漠然と「もう疲れた。自由になりたい」って思ってしまったんです。 でもそうやって“身も心も休みたい、好きな人もいない、どうしよう”って時にちょうどテレビ出演の話をどんどん頂いたので、良い意味で時間を埋めることができたんですよ。全く違う世界に飛び込むことは何もかも新鮮で、心のリフレッシュにもなり、結果的に私の心を救ってもらいましたね。 <ゴールデンボンバー・鬼龍院翔さん> 曲作りのスランプはあまりないですね。ただ「女々しくて」が売れ過ぎた時は、もう一曲こんな大ヒットを作り出さなきゃと思っていたけど全然できなくて、スランプなのかなぁと思っていました。でもそんなこと関係ないんですよね。 「女々しくて」だって、リリースした時は売り上げ77位で、そのまますぐ圏外になって、しばらくはファンの間でしか知られていない曲だったんです。それが2年後くらいに何故かヒットしましたからね。どんな曲がいつ何で流行るかなんて誰にもわからないんですよ。だから、僕はもうヒットしなきゃという悩みからは脱出して、自分が良いと信じる曲を作るのみです。 <erica> 【告うた】が“片想いソング”だけを意味していた時期は、スランプに陥りました。告白のラブソングとなると、どうしてもワードが限られてきまして。いっぱい作っていると「これ前にも使ったな…」というフレーズが出てきちゃうんですよ。それで「違うワードに変えなきゃ」と言葉を選び直したりしていました。 でもそれだと結局、作品としてしっくりこなくて。最初に選んだ言葉が「これを伝えたい」という素直な想いで、やっぱり他の言葉では越えられないんですよね。だから「たとえ何回使っていたとしても、使いたいと想った言葉を入れよう!」と決めてからは、だいぶ楽になったような気がします。  井上苑子やMACOのように【とにかくより良い形を模索する】か、阿部真央のように【スランプ期の気持ちさえ何かに昇華する】か、コレサワのように【自分の心に逃げ場を作っておく】か、柴田淳のように【全く違う世界に飛び込む】か、鬼龍院翔やericaのように【スランプをきっかけに本当に大切な信念にたどり着く】か。  わたしたちの恋愛や仕事や勉強や人間関係、あらゆる悩みにも通じる“スランプ脱出法”ではないでしょうか。前に進みたいのに、何をどうしたらいいのかわからないという方。是非、自分の心身に合った方法を試してみてください。そして、いつかそのスランプ期のことを笑って話せる日がやってきますように…!

    2019/08/22

  • リリィ、さよなら。
    その当時はしっくり来なかった歌詞が、未来の自分に追いついてくる。
    その当時はしっくり来なかった歌詞が、未来の自分に追いついてくる。

    リリィ、さよなら。

    その当時はしっくり来なかった歌詞が、未来の自分に追いついてくる。

    2019年8月7日に“リリィ、さよなら。”がニューアルバム『最終話までそばにいて』をリリースしました。彼がこのアルバムのコンセプトに据えたのは【花】です。収録楽曲の1曲1曲を花になぞらえ、楽曲を聴き終えたあと、ブックレットの最後に添えた花言葉を読むと、その曲の歌詞が色彩を放つ仕掛けになっているんだとか!  切ない歌詞と綺麗なメロディで聴く人の涙を誘う、彼ならではの世界を堪能できる楽曲はもちろん。これまでとガラっと変わった一面を魅せる楽曲も加わった全7曲が収録されております。さて、今日のうたコラムではそんなアルバムについての歌詞エッセイを、リリィ、さよなら。本人が執筆!4週に分けて記事をお届けいたします。今回は プロローグ 、 アルバムセルフライナーノーツ【第1章】 に続く、【第2章】をご堪能ください…! 『最終話までそばにいて』 ~セルフライナーノーツ【第2章】~ 【M3. Lovin' you 】  【第1章】で述べた「やらなかったことをしよう」という気持ちで作った曲がこれである。実際に楽曲を聴いていただければすぐお分りいただけるだろうが、歌詞を見ただけてもそれは明白である。「なんかキツいこと言ってるなこれ。」と言った感じの。  リリィが今まで発表した楽曲の歌詞は「ありがとう」や「ごめんね」といった、恋愛や人生に関する、優しく切なく美しいものが多かったように思う。そうしたかったから沢山作ってきた。  が、もう別に初々しい自分な訳でもないし、大人なんだから色んなことがあるから、色んなこと言ってもいい。そう思って今回の曲ができた。アルバムの曲で最後に完成した。 綺麗売りしてる君が 台無しになっていくのが見たいな  まさにこの歌詞の通り、綺麗なだけじゃない自分の側面を初めて曲にできたように感じる。作る時、できた時、レコーディングする時。それはそれは気持ちよくて楽しかった。  歌詞の内容的には現代を生きる人間のうしろめたい部分を書いている。「結局どんな綺麗な言葉を振りかざしたってお前もやってることはやってるだろ」これが私のこの曲に対する気持ちである。  大人になると、本音と建前のはざまで気持ちがすり減っていくことが多い。恋愛も綺麗なものばかりではない。そんなことを堂々と開き直った曲である。またSNS時代に少し触れてもいる。 アリバイ工作抜かりないぜ SNSはノータッチ 聖人君子の顔して みんなやってることは同じだね 見ざる 聞かざる 言わざるって嘘つけ お前は猿以下でござる  これは本当に「あるある」だと思っている。SNSで24時間あらゆる人間と繋がれる現代ならではの。ログインの時間、ちょっとした投稿内容、そんなとこからも誰かから見られることを意識してアリバイ工作してしまう。どこからか漏れてしまう、どこからか炎上してしまう。そんな可能性を胸に抱く現代人の気持ちを表してみた。  ここまで書くと、すごく辟易してしまうような楽曲にも感じられるが、その分、曲調は初挑戦のファンクに仕上がっていてノリノリなので安心して聴いてほしい。手拍子してくれてもいい。今後はこのようなもっと自由な曲も作っていこうと自分に勇気を与えてくれた楽曲。ぜひ楽しいひとときのお供にしてほしい。 楽曲の花…「クレオメ」 花言葉…「秘密のひととき」 【M4. Your best friend 】  これはリリィ、さよなら。王道の報われない恋シリーズ的な1曲である。端的に言うと、ずっと好きだった子が結婚しちゃうと言う内容である。  この曲を完成させたのはまだ21歳の大学生の時だった。半分ノンフィクション、そして半分は想像で書いた。しかし当時は、歌っているときに自分自身、あまりリアリティを感じられず、歌っていてもいまいち気持ちが乗ることがなく、何年もストックの中で寝ていた曲だ。  しかし不思議なもので、ソングライターあるあるかもしれないが、時間が経って、その当時はしっくり来なかった歌詞が、未来の自分に追いついてくる。そんな現象が起こるのだ。この曲がまさにそれである。その当時、想像と背伸びをして書いた曲は、20代後半になった今の自分にピッタリの今まさに「等身大」の曲となって歌えるようになったのだ。 特別じゃない僕らは約束もできないまま そのうち来る別れを待つだけ 回る回る世界でやっと巡り逢えたのに 抱きよせれば醒めてしまう夢  このフレーズのように、大人の恋の方がずっとずっと切なくて難しいのかもしれないと最近思う。「結婚」「仕事」「生活」「お金」「責任」などが伴い、手放しに恋愛することが難しい。  オーガニックでアンビ感のあるバンドサウンドに乗せて、そんな少しビターな大人の事情をはらみつつ、それでも恋する甘酸っぱい気持ちも詰まった1曲で2回お得な仕上がりになったと思っている。 楽曲の花…「シオン」 花言葉…「君を忘れない」 【M5. コールドスリープ 】  アルバムに毎回「SFシリーズ」という自分の趣味嗜好を詰め込んだ曲を1曲入れるようにしている。アンドロイドもの、記憶喪失もの、輪廻転成ものなどだ。過去曲の中でいうと以下である。 でも、もし生まれ変わったらその時は探すからね 「 約束 」/リリィ、さよなら。 (1stアルバム『リリィ、さよなら。』収録) たしか君に叱られたこと たしか君を傷つけたこと たしか君と笑い合っていたこと ぜんぶ ぜんぶ 思い出したよ だから だから 「 フラッシュバック 」/リリィ、さよなら。 (2ndアルバム『ハッピーエンドで会いましょう』収録) 君を最期まで大切に想える 世界で一番シアワセな機械さ 「 シアワセな機械 」/リリィ、さよなら。 (3rdアルバム『どうして君は世界で一人』収録) きっと世界に『一人』きりなら 心なんてものは 生まれなかったんじゃないかなって思うんだ。 すべてが君の手で生まれた 「 ハンドメイド」 /リリィ、さよなら。 (4thアルバム『愛する以外になかったからさ』収録)  そして今回も1曲作ったSFシリーズが「コールドスリープ」である。「コールドスリープ」とは、SFものに出てくる冷凍睡眠のことで、生き物を凍らせて何100年も生きながらえさせるという架空の技術である。なんともロマンを感じる。  まずタイトルから先に作った。題材が題材のため作詞は難航したが、曲はすぐできたパイプオルガンやチェンバロが入り神秘的なサウンドにも仕上がった。この曲はリリィの曲の中では珍しくかなり抽象的な歌詞内容になっている。本当は自分の中で明確なストーリーが存在していてそれを話したいのだが、聴き手に余白を与える、自由に聴いてもらうということを大事にして、あえて語らないこととする。  結論だけ述べると「世界中であなたしかあなたがいないという絶望と、それゆえの想い。」みたいなものである。人を愛する気持ちの真理に触れているような気がして、個人的にとても気に入っている作品である。 楽曲の花…「スターチス」 花言葉…「永遠に変わらない」 <リリィ、さよなら。> 【最終章へ続く!】 ◆ニューアルバム『最終話までそばにいて』 2019年8月7日リリース POCS-1816 ¥1800+税 <収録曲> 1.その手にふれたあの日から 2.甘い生活 3.Lovin’you? 4.Your best friend 5.コールドスリープ 6.Clover 7.モラトリアム

    2019/08/21

  • 大原櫻子
    月を見れば君思う、会いたくてバカでしょ?
    月を見れば君思う、会いたくてバカでしょ?

    大原櫻子

    月を見れば君思う、会いたくてバカでしょ?

    呼吸をすることさえ恋をすることの 副作用だとしたらどうする (鈴木晴香)  こちらは歌人・鈴木晴香さんの作品。生まれたときから、当たり前に繰り返してきた【呼吸】がもし【恋】の【副作用】だとしたら…。そんな仮定をするほど【恋をすること】が生きることの“主”になっている現状が、伝わってきます。また、【呼吸をすること“さえ”】ということは、他にも自分のなかに様々な【副作用】が生じているのでしょう。  そうした自分の変化に「どうしよう…!」と思う気持ち、だけどどうしようもない気持ち、一度でも恋をしたことがある方ならわかりますよね。さて、今日のうたコラムでは、ピックアップした短歌にも通ずるような新曲をご紹介。2019年7月31日に“大原櫻子”がリリースしたニューシングル『I am I』のカップリング曲「未完成のストーリー」です。 君の言葉が 私の星に咲き誇る 土曜日 携帯光るたび ニヤけてしまって 本当はこんなキャラじゃないんだ 返事だってまめじゃない 膨らむこの思いに 気づきませんように 衣替えするみたいに ダンボールに気持ち押し込み 友達のままいれたら 楽に呼吸できるのに 「未完成のストーリー」/大原櫻子  作詞を手掛けたのは、高橋久美子さん。AbemaTVの恋愛リアリティーショー『恋する 週末ホームステイ2019・夏「秘密」』主題歌となっている1曲。実は、この歌にも【恋をすることの副作用】と言えそうな変化がいくつも綴られているんです。本当は<携帯光るたび ニヤけて>しまうようなキャラじゃないし、<返事だってまめじゃない>主人公。    それなのに<携帯>が<光る>瞬間を毎回、見逃さないほど<君>からの返信を気にしてしまう。些細な<君の言葉>が<私の星に咲き誇って>日常を輝かせる。もちろん<返信だってまめ>にする。すべて<膨らむこの思い>のせい。つまり【恋をすることの副作用】なのです。でも、そのことをまだ<君>には気づかれたくない模様。  それゆえに、いっそ“LOVE”という感情を<衣替えするみたいに ダンボールに>押し込んで、代わりに“LIKE”を取り出して<友達のままいれたら>と願うのでしょう。ただ【恋】はそう簡単には操れないんですよね。どんどん<膨らむこの思い>は押し込むことなんてできなくなって、心いっぱいに広がって、呼吸さえしにくい状態に。まさに【呼吸をすることさえ恋をすることの副作用】となっております。 月を見れば 君思う 会いたくて バカでしょ? 二人だけ宇宙に浮かぶ 未完成の星 眠れないの 君のせい 朝昼夜夢でも ページめくり進みたいけど 今日も未完成のストーリー 「未完成のストーリー」/大原櫻子  会いたくてバカでしょ? と、<本当はこんなキャラじゃない>はずの<私>ならではの言葉で“好き”が溢れるサビ。自分でも<バカでしょ?>と笑っちゃうくらい、というより、無理にでも自虐して笑ってみないと、どうにかなりそうなくらい、日常のなかでいつも<君>を思っているのです。月を見ても、朝昼夜夢でも。らしくないロマンティックな<ストーリー>を描いているのです。 カーテン揺らす夜風が 君を運んできたらいいな 子どもじみた妄想 ゆれる 二つの赤い花 月を見れば 君思う 気づいてるでしょ ずるい人 優しい棘が心に ずっと 抜けなくて 眠れないの 君のせい 朝昼夜夢でも 転んでも君と一緒なら きっと痛くないと思うの 「未完成のストーリー」/大原櫻子  さらに、歌が進めば進むほど“らしくない私”の素直な想いはこぼれてゆきます。やっぱり<子どもじみた妄想>と自虐してしまうけれど、頭に浮かぶ可愛らしい気持ち。<気づいてるでしょ ずるい人>とすねる気持ち。そして<転んでも君と一緒なら きっと痛くないと思うの>と“一緒の未来”を望む気持ち。もう<膨らむこの思いに 気づきませんように>とは、願っていないでしょう。 君に気持ち伝えたら 自分も好きになれるのかな 奇跡はもう起こってるの 咲き誇れ赤い花 「未完成のストーリー」/大原櫻子  そして今、胸にあるのは“君に気持ちを伝えたい”という願い。きっと、そう願えるようになったことも【恋をすることの副作用】のひとつ。そしてそれらのあらゆる変化は、何もかも<奇跡はもう起こってる>ことの証ではないでしょうか。自分がこんなに変われるほど好きな人に出会えた。それこそが<奇跡>なのです。 眠れないの 君のせい 君もそうだといいな ページめくり進む勇気を きっと完成するストーリー 「未完成のストーリー」/大原櫻子  こうして幕を閉じてゆく歌。最後の最後では<ページめくり進む勇気を>を持ち「未完成のストーリー」を完成させようという“意志”が輝いております。今、恋をしているあなた。本当はこんなキャラじゃないと、気持ちにフタをしようとしているあなた。是非、大原櫻子「未完成のストーリー」を聴いてみてください。あなたの「未完成のストーリー」も、いつか大好きな人と完成する日が来ますように…! ◆紹介曲「 未完成のストーリー 」 作詞:高橋久美子 作曲:小名川高弘 ◆10thシングル「I am I」 2019年7月31日発売 初回限定盤 VIZL-1621 ¥1,389+税 完全生産限定盤 VIZL-1622 ¥1,852+税 通常盤 VICL-37488 ¥1,111+税 <収録曲> 1.I am I 2.未完成のストーリー 3.泣きたいくらい -Englishver.-

    2019/08/20

  • reGretGirl
    こんなことなら気持ち確かめるんじゃなかったよ。
    こんなことなら気持ち確かめるんじゃなかったよ。

    reGretGirl

    こんなことなら気持ち確かめるんじゃなかったよ。

     2019年9月25日に“reGretGirl”が3rdミニアルバム『soon』をリリースします。現在、発売に先駆け、収録曲「テレフォン」が先行配信中&歌詞公開中です。今日のうたコラムではそんな新曲をご紹介。これまで様々な失恋ソングを放ってきた彼らですが、この新曲にもまた、ひとつの恋が失われていくときのリアルな感情が綴られているんです。 顔を見ればまだ終わらせられそうにないって言うなら 別れる必要ないでしょ 「テレフォン」/reGretGirl  顔を見ればまだ終わらせられそうにない。だからこの「テレフォン(電話)」で終わりにしたい。そう恋人に告げられたところから、歌は幕を開けます。きっと恋人は、主人公のことを嫌いになったわけではありません。ゆえに会えば“情”が湧き、ズルズル続けてしまうこともわかるのでしょう。でも、かといって<別れる必要ない>わけではないんですよね。 最近なんだか冷たい 今どう思っているのか確かめてみたい 5月下旬、窓からの夜風と返事は冷たかった 「先が見えない」「一緒にいられない」 「でも会えば別れられそうにない」 納得のいかない言葉を耳に詰めるしかなかった ずっと同じでいる事はこんなにも難しいのか 「最後に会ってほしい」にどうして答えてくれないんだ 「テレフォン」/reGretGirl  そもそも何故、これが最後の電話になりそうなのか。それは主人公が<最近なんだか冷たい>恋人の言動を不安に思い、思い切って<今どう思っているのか>を<確かめてみた>から。すると、答えは歌詞の通り。まさか“別れ”までは予想してなかったことでしょう。ただ、恋人の言葉からはこの決断が突然のものではないことが伝わってきます。  まず、時は<5月下旬>です。恋愛サイトによると、恋人が別れやすい時期は、新年度が始まる少し前である2月下旬~3月だそう。4月までに中途半端な関係をリセットしたくなるため。ですが同時に、バレンタインデーやホワイトデーといった大きなカップルイベントもございます。おかげでひとまず魔の2月下旬~3月を乗り切れる恋人たちも多いんだとか。しかし、スタートの季節を過ぎた<5月下旬>頃、再び魔の時期は訪れるのです。  新しい環境で、新しいご縁が深まってきたり。逆に5月病に陥って、落ち込んでいたり。そんなとき「自分が一生一緒にいたい人とは…」と、恋愛面の現実もシビアに考えますよね。この歌の恋人も然り。それが<最近なんだか冷た>かった理由です。考え尽くした結果“もう無理”という答えにたどり着いたのでしょう。そして、決断の告げ時に迷っていたところ、タイミング良く(悪く?)主人公が電話をかけたのではないでしょうか。 確かめ合った愛、くだらない約束、 こぼした愚痴、ふたりだけの夜、 寂しさだけで押したボタン 内容なんて無くてよかった 「繋がり」をただ感じていたかった 会えない距離をいつも埋めてくれていた 「テレフォン」/reGretGirl  <ずっと同じで>いたかった。<内容なんて無くてよかった 「繋がり」をただ感じていたかった 会えない距離をいつも埋めてくれていた>と思っていた主人公。でも、恋人にとっては、それじゃダメだったのでしょう。変わりたかった、変わってほしかった、会って「繋がり」を感じたかった、電話じゃ<会えない距離>は埋まらなかった、でも変わりそうもない、二人の将来も想像できない…。それゆえの別れの決断なのです。 顔を見ないでサヨナラを言えてしまうこの時代に こんな事を言うのは大袈裟かもしれないけど もうこの世の終わりが本当に来てしまったみたいだ 何もかわらない二度と戻れない こんなことなら気持ち確かめるんじゃなかったよ 交わした言葉が全て無駄になるから どうかこの電話だけは切らないでよ 「テレフォン」/reGretGirl  こうして幕を閉じてゆく歌。今まで二人を繋いできた「テレフォン」が、終止符を打つきっかけとなり、この電話を切れば、この恋も終わってしまうと思うと苦しいですね…。何ひとつ納得できてないのに<顔を見ないでサヨナラ>されてしまい、<こんなことなら気持ち確かめるんじゃなかった>と嘆く主人公の悲しみも痛いほどわかります。    それでもやっぱりこの恋は寿命だったのでしょう。恋人にとって、もう“愛情”はただの“情”へと変わってしまっていたのだと思います。何より主人公は、恋人が「先が見えない」「一緒にいられない」と答えを出す前に<気持ち確かめる>べきだったのです。いろんなことを<顔を見ないで>済ませられるこの時代だからこそ、reGretGirl「テレフォン」のような悲しい結末にたどり着かないよう、人肌を感じる「繋がり」をより一層、大切にしていきたいですね…。 ◆紹介曲「 テレフォン 」 作詞:平部雅洋 作曲:平部雅洋 ◆3rd mini album『soon』 2019年9月25日発売 NBPC-0072 ¥1,800(税抜) <収録曲> 1.12月29日 2.白昼夢から覚めて 3.キスの味 4.soak 5.ブロッサム 6.テレフォン 7.おわりではじまり

    2019/08/19

  • イチオシ!
    ああいう“愛”が書けていたのは不思議な部分もあります。
    ああいう“愛”が書けていたのは不思議な部分もあります。

    イチオシ!

    ああいう“愛”が書けていたのは不思議な部分もあります。

     みなさんは、数年前と今、自分のなかで変化したことってありますか? たとえば、以前は「人間なんて誰もが一人ぼっちに決まってる!」と思っていたけれど、今は「いや、そうでもないかもしれない…」と感じたり。恋愛がすべてだと思っていたけれど、別の楽しさを発見したり。逆に恋愛なんて無縁だと思っていたけれど、初めて愛を知ったり。  また、容姿も環境も変わっていくものですので、人は常に変化の繰り返しとも言えるでしょう。さて、そんななか今日のうたコラムでは 【歌詞面での変化】 をご紹介いたします。アーティストもまた、時とともに作詞法や価値観、描きたいメッセージが変わってゆくことが多々。今日は 【前編】 に引き続き 【後編】 として、7組の過去インタビュー回答をピックアップ! <絢香(2018年取材)> 変わらない想いやテーマはあるんですけど、年齢と共に“チョイスする言葉”が変わってきている気はしますね。たとえば今回のアルバム(『30 y/o』だと、1曲目の「 カラフル!! 」の<色の無い時代>とか。自分の内から出てきた感情を言葉にするというところから一歩離れて、今の時代と冷静に向き合うこともできるようになったのかなって。 <忘れらんねえよ・柴田隆浩(2017年取材)> 前は、歌いたい相手を限定していたんですよ。モテない男子とか童貞男子を肯定して、イケている奴らを完全否定するみたいな。でも今はもっと人間全体を見たいんですよね。きっと俺が今まで否定してきたイケている人にも、どこかにしんどさってあるんだろうし。だからこれからは、頑張っている人たちみんなの“うまくいかない気持ち”を表現したいし、「こう変わるといいなぁ」って希望まで一つの歌のなかで伝えたいですね。 <家入レオ(2018年取材)> 以前は、発信者としての視点しか持っていなくて、すごくガムシャラで、グレーって言っておけば良いところを白黒はっきりつけたがる、みたいなところがあり…。でも二十歳を過ぎて、一人の人間としても、アーティストとしても、女性としてもたくさんの経験をしていくなかで、もっといろんな視点を持てるようになって。 だから、自分のちょっとした実体験を妄想で脚色して物語にする、というような作詞法も楽しめるようになりましたね。渋谷で思いっきり肩をぶつけられたのに「ごめんなさい」も言われなかった時のモヤモヤから、ブワーッと歌詞が生まれるときもあるし。フィクションもノンフィクションも両軸を楽しめるようになったんです。 <ビッケブランカ(2018年取材)> もう昔と今じゃ、月とすっぽん並みに歌詞の存在意義が変わりました。比べるまでもないですね。僕は幼い頃からずっと、サウンドやメロディーにばかりこだわってきたから、歌詞に必要性を感じていませんでした。サウンドを引き立てる、ただの発音でしかなかったんです。 フェスとかでいろんなアーティストと曲作りの話をしても、やっぱりみなさん最初に「この気持ちを歌いたい」というところから歌詞が生まれて、音楽を作っていくかたが多くて。だけど僕は真逆だった。音が気持ちよくて仕方なかった。歌いたい気持ちなんてなくて、作りたい音しかなかったんです。歌詞や言葉の力に気付いたのは、本当つい3~4年前のことですね。 (中略) 今、僕がやっているのはその二つの作詞法が共存した歌詞を書くこと。自分にも、日常の中で本当に一瞬、悲しくなること、ツラくなることってあるんですよね。その一瞬をプッと切り取って、想像上の主人公に込める。つまり自分の本当の感情を大げさにストーリー仕立てにするという感じでしょうか。 そうすると、その曲で自分も救われるし、きっと聴いてくれる人も同じように救われるんじゃないかなぁ、そうだったらいいなぁと思う。だから25歳で始まり、27歳で本物になった歌詞人生なんです。そして今があるという感じですね。 <奥華子(2019年取材)> どうかなぁ…。いや、歌詞はあんまり変わってないかもしれないです。結局、恋愛って変わらないんですよね、ずっと。本当に成長してないなぁと思う。好きになったら、高校生のときの「好き!」って気持ちと、今の年齢での気持ちと、まったく変わらない気がします。だから、学ばないし、繰り返すんだなって…(笑)。 <erica(2019年取材)> それがまったく変わっていないんですよ。だからこそ今の年齢の私が等身大のつもりで書く歌詞が、中高生に響くわけです(笑)。実は本当にそこが課題でして。やっぱりもっと同世代の女性にも聴いてほしい。私は不器用で仕事が充実しないと恋愛まで手が回らないという現実もありまして。きっとここで悩んでいる方も多いと思っていて。そういう部分では共感してもらえる世界観の歌詞を書けそうです。 <大塚愛(2018年取材)> う~ん。娘が産まれるより随分と前に「 愛 」という曲を書いたんですけど、その歌詞は「あれ?私この時期にもう子どもがいたのかな?」って思うくらいの内容なんですよ(笑)。そう考えると変わってないのかなぁ。こう…娘に会うことを目標にそれまで活動してきたというか、ずっと自分のなかに一緒にいたような感覚。ああいう“愛”が書けていたのは不思議な部分もあります。    いかがでしたでしょうか。様々な【歌詞面での変化】がある一方で、奥華子やerica、大塚愛のように「変わっていない」と語るアーティストのコメントも印象的です。恋愛観が変わらないから、歌詞も変わらない。環境が変わっても、歌詞は変わらない。その“不変の理由”もまたおもしろいですよね…!  また、今回ピックアップしたアーティストの方も、数十年後、数年後、数日後、今、さらに新たな“変化”があるのかもしれません。今後も、人間にとって大切な“変わったこと”や“変わらないこと”に注目しながら、インタビューをお届けしてまいりますので、様々な回答を楽しみに、ご熟読ください!

    2019/08/16

  • イチオシ!
    開眼したという感じ。あ、まだまだ書けることある!って。
    開眼したという感じ。あ、まだまだ書けることある!って。

    イチオシ!

    開眼したという感じ。あ、まだまだ書けることある!って。

     みなさんは、数年前と今、自分のなかで変化したことってありますか? たとえば、以前は「人間なんて誰もが一人ぼっちに決まってる!」と思っていたけれど、今は「いや、そうでもないかもしれない…」と感じたり。恋愛がすべてだと思っていたけれど、別の楽しさを発見したり。逆に恋愛なんて無縁だと思っていたけれど、初めて愛を知ったり。  また、容姿も環境も変わっていくものですので、人は常に変化の繰り返しとも言えるでしょう。さて、そんななか今日のうたコラムでは 【歌詞面での変化】 をご紹介いたします。アーティストもまた、時とともに作詞法や価値観、描きたいメッセージが変わってゆくことが多々。今日は【前編】として、6組の過去インタビュー回答をピックアップ! <井上苑子(2019年取材)> 今までは感情をすぐ言葉にしていたというか。ただ伝えたいことだけを書いた、飾りのない丸裸な歌詞だったんですよ。だからこそ、等身大とか言っていただけていたんですけど。でも今は、いろんなものをまといたいなと思っているんです。曲の核を決めたら、その周りの物語とか、言葉選びをもっと丁寧に描いていきたいなって。きっとそんなことアーティストのみなさんはもっと前からやっているんだろうけど、私は本当にわかっていなくて。最近になってようやくそういう作詞法に変わってきましたね。 <BLUE ENCOUNT・田邊駿一(2019年取材)> 今回(ニューアルバム『SICK(S)』)の楽曲はどれも10年前には書けなかったと思います。あとやっぱりね…なんというか…活動を重ねてきたからこそ、自分たちの立ち位置でフィルターをかけないといけないときもあるんですよ。言い過ぎちゃダメだし、あまりマイナスなことを想起させるのは僕らのライフワークとは違うし、そういう“ブルエンらしさ”というところはすごく考えてやってきました。 そんななかで今回は、うまいことすべてのバランスを取って、アーティストとして言いたいエッセンスを入れることができたように思えるんです。自分の内面を主観で見つつ、俯瞰で見る。その両方の作業を何回も繰り返しましたね。その結果、今までで一番時間はかかったけれど、一番満足のいく歌詞が書けたと思います。 <足立佳奈(2019年取材)> 小中学生の頃はとにかくラブソングばっかり歌っていたんですね。でも今は将来のことを真剣に考えて悩んだりとか、友達や家族のことを思ったりとか、何かや誰かを“心配してるよ”という歌をよく作っています。そういう時期なんですかねぇ。 (描くことが多い感情は)喜怒哀楽で言えば…哀ですね。怒まではいかないけれど、怒と哀の間くらい。自分の気持ちをさらけ出したいというか。世の中への訴えとか、私の明るいだけではない本音とか、決意とかを書くかな。デビュー時は思いっきり“楽”だったと思うんですけど、今は正反対な感じです(笑)。 <BIGMAMA・金井政人(2019年取材)> 単純なところだと、僕は最初、洋楽のバンドに憧れていたので、英語で歌う曲が多かったんですね。だけどやっぱりミュージシャンとして、まず日本人としてきっちり日本語で勝負できないと、長く音楽家でいることは難しいと思って。そこから日本語の歌が増えていったという変遷はあります。そこ以外はあまり変わってないかな。ただ、年相応の言葉にはなっていますね。今の自分が歌って、恥ずかしいか恥ずかしくないか、という美徳みたいなものは年齢を重ねるにつれ、少なからず変化していると思います。 <阿部真央(2019年取材)> 息子が産まれるちょっと前から、フィクションの世界を歌詞に書くのもありだと自分に許可し始めましたね。活動の中期以降、2015年のアルバム『おっぱじめ!』くらいのときかな。それまでは実体験をもとにしか書いていなかったし、それを評価されていたので、実体験を書かなければいけないって思い込みがあったんです。 でも、年々その考えが柔和になっていって、フィクションに対する苦手意識が薄れていったという変化はあります。あと、息子が産まれてからは、母になったからこその感覚で書ける曲、書きたい曲ができたのは大きな変化かな。ただ、音楽性が変わったというよりも“母親として”という新たな引き出しが増えたような感覚に近いと思います。 <槇原敬之(2019年取材)> J-POPってどうしても“恋愛のお供”みたいなところがあるじゃないですか。でも、自分がちょうど30歳になるタイミングであった当時、友達に言われたんですよね。「もうそろそろ恋愛以外のことも歌っていかないと、嘘なんじゃないの? お前が40歳、50歳になって恋愛の歌しか歌わないって、キショイよ!」って。それが意外と僕の中で「そうだよねぇ!? ずっとこのままじゃ寂しい男じゃん!」と、刺さりまして。その会話がひとつの(変化の)きっかけだったように思います。 そして、その変化が最初に反映されていると思う曲は「 太陽 」かな。そこから、SMAPの「世界に一つだけの花」が書けたりもして、恋愛以外の物事をどうポップスに落とし込んでいくかという楽しみが始まったんです。それまでの活動に本腰を入れていなかったわけではなく、開眼したという感じ。あ、まだまだ書けることある!って。そのほうが音楽家として長く続けられるだろうという未来も見えたので、決意できました。これからも自分が人生で感じることがある限りは、歌詞を書いていけるんだろうなぁって思っています。 【後編へ続く!】

    2019/08/15

  • リリィ、さよなら。
    そうだ、このアルバムを“花束”に見たてよう。
    そうだ、このアルバムを“花束”に見たてよう。

    リリィ、さよなら。

    そうだ、このアルバムを“花束”に見たてよう。

    2019年8月7日に“リリィ、さよなら。”がニューアルバム『最終話までそばにいて』をリリースしました。彼がこのアルバムのコンセプトに据えたのは【花】です。収録楽曲の1曲1曲を花になぞらえ、楽曲を聴き終えたあと、ブックレットの最後に添えた花言葉を読むと、その曲の歌詞が色彩を放つ仕掛けになっているんだとか!  切ない歌詞と綺麗なメロディで聴く人の涙を誘う、彼ならではの世界を堪能できる楽曲はもちろん。これまでとガラっと変わった一面を魅せる楽曲も加わった全7曲が収録されております。さて、今日のうたコラムではそんなアルバムについての歌詞エッセイを、リリィ、さよなら。本人が執筆!4週に分けて記事をお届けいたします。前回の プロローグ に続き、今回はアルバムセルフライナーノーツ【第1章】をご堪能ください…! 『最終話までそばにいて』 ~セルフライナーノーツ【第1章】~ 私自身がアルバムの楽曲にこめた 想いや制作の背景を話そうと思う。 【制作開始】  今回のアルバムは今年の1月に入って制作が決まり、実はその時にはまだアルバムの曲は何一つ決まっていなかった。だから今作はとにかく新しい曲を作ることから始まったため、様々なテイストの楽曲が生まれ、詰め込められたバラエティ豊かなものになった。  今まで“リリィ、さよなら。”はミディアム~バラードの切ない楽曲が多かったが、令和最初のリリースというタイミングである今作は「せっかくだから今までやらなかったこと。やれなかったことをやろう。だって新時代だし」という、コンセプトで作り始めた。オーガニック感溢れるミディアムや、今にも踊り出しそうなファンクの曲も出来た。  様々なテイストの楽曲がバラバラに集まったので、どうしようと悩んだところ「あ!そうだ、このアルバムを“花束”に見たてよう。」というアイデアが浮かんだ。花束なら新しい何かが始まる時にぴったりだし、いろんな種類の花が集まって一つの美しい作品になっている様が、このアルバムにピッタリだと思ったのだ。  つまり今作のテーマは、バラバラの7曲の物語一つ一つを花ととらえ、それをまとめた【花束】であるということだ。7つのストーリーを表す花と花言葉もそれぞれ与えた。まさに実験的なアルバムである。では、これからそれらの新しい楽曲を少しずつご紹介しようと思う。 【M1. その手にふれたあの日から 】  アルバムのリード曲。多分 自他共に1番「リリィっぽい」と思えるミディアムバラードである。今作には、他にもリードにしたい曲があったのだが、新しいことに挑戦した楽曲もあれば、この楽曲のように「背骨」のような、変わらないで聴いてもらえる楽曲もあるべきと考え、今作の看板になった。  内容としては、主人公の<僕>が、友達以上恋人未満な<君>にとっての、頼られる良いやつポジションではあるが、なかなか気持ちを伝えられず、もう一歩が進展しない片思いのもどかしさを歌った曲である。  実はこの曲最初に誕生したのは、リリィが地元・熊本で高校生をしている時代であった。ハイティーンのまだピュアな恋愛の視線がリアルで、大人になった今歌うと、恥ずかしくなったり照れたりしてしまうくらいだ。今回は夏のリリースということもあり、この曲の甘酸っぱい感じが季節にぴったりだと思ったのだ。   「近代主義の流れの中で身に付いた自己防衛のせいだよ」 と、始まる歌詞は、高校生だった自分が、ちょっと背伸びしてかっこつけたことを言おうとしている感じが表されていて、こんな男の子かわいいなと笑ってしまう。若さっていいな。  また、この曲は<僕>が<君>との日々の中で、なかなか進まない関係や踏み込めない自分にもやもやしつつ、最後には気持ちを伝えるところで終わる。 こんなしょうもないやつだけどさ 聴いてくれ 「       」  最後の歌詞。あえて歌詞カードに空白のカギ括弧をつけた。音源ではこの部分で、何かを言おうと大きく息を吸って終わる。いったい<僕>は<君>になんと言ったのか、そしてその後の二人はどうなってしまったのか、それは書いた僕にも分からない。この楽曲を聴いてくれた方が自由に思いを馳せてほしい。 ◆楽曲の花…「プリムラ」 花言葉…「青春の始まりと悲しみ」 【M2. 甘い生活 】  この楽曲はもはや僕の夢であり、祈りであり、確かな幸福の記憶である。糖度がかなり高い。これがフルーツや野菜だったら相当メディアで特集されるであろう。それくらい甘い。歌詞がタイトル負けしてない自負がある。 窓に差す光が 君の横顔を照らして 今日は休みだって思い出して 「幸せだなあ」柔らかく笑った  休み前日からお泊まりデートして、起き抜けの朝の一コマである。「今日は休み」だったこと、そしてそんな朝に大好きな「君」がいること。まさしく甘い生活である。幸せの象徴。  あいにく私は、プライベートに幸福な思い出があったことが、はるか昔のことなので作る際にはかなりの努力を要した。必死に思い出した。心の中で空想の恋人まで作ってみた。胸キュンの少女漫画やBLも読んだ。  その結果できた曲がこちらである。終始「こんなカップルに自分もなりたい」「恋したい」気持ちが溢れる作品となった。この曲を聴いてくれたあと、実写化した少女漫画の映画を観たあとみたいな「どうしようもなく恋したい」や「今すぐ好きな人に会いたい」という気持ちになってもらえたら、こちらの目論見としては概ね成功である。  ああ自分もまたこんな恋したい。今まさに私もこの曲を聴きながらそう思っている。 ◆楽曲の花…「ドラセナ」 花言葉…「幸福」 <リリィ、さよなら。> 【第2章へ続く!】 ◆ニューアルバム『最終話までそばにいて』 2019年8月7日リリース POCS-1816 ¥1800+税 <収録曲> 1.その手にふれたあの日から 2.甘い生活 3.Lovin’you? 4.Your best friend 5.コールドスリープ 6.Clover 7.モラトリアム

    2019/08/14

  • Uru
    それでも二人で願った、どこかで見たような日常でいい。
    それでも二人で願った、どこかで見たような日常でいい。

    Uru

    それでも二人で願った、どこかで見たような日常でいい。

     2019年9月11日に“Uru”がニューシングル『願い』をリリースします。表題曲は、TVアニメ『グランベルム』エンディングテーマに起用されており、7月26日より先行配信がスタート。尚、歌詞先行公開中には【注目度ランキング】にて最高5位を記録し、TOP10入りをキープし続けておりました。今日のうたコラムでは、そんな話題の新曲をご紹介。 灰色の視界の中で 一人で歩くのは簡単じゃなかった 曖昧な輪郭をたどり 手繰り寄せた糸は繋がってなかった 「願い」/Uru  自身のTwitterにて、Uruが『身も心も削がれるような日々の中では「日常」がどんなに幸せだったかをより感じます 強さと弱さが共存する曲になっています』と綴っていたこの歌。まず、冒頭から見えてくるのは<灰色の視界の中で 一人で>歩こうとしてきた<私>の姿です。伝わってくる<灰色>の感情は、寂しさ、不安、迷い、憂鬱、虚しさ。  そしてイメージできる<灰色>の景色は、薄暗く不透明な世界や、晴れ間の見えぬ曇り空、冷たいコンクリートビルに囲まれた街…。しかしそんな<灰色の視界の中>でも<私>は、必死にどこかへ進もうとしてきたのです。何かを信じ<曖昧な輪郭をたどり>ながら。立ち止まらずに。それは<一人>の“強さ”だったと言えます。  ただ、現実は想像していたより残酷。希望にすがる想いで<手繰り寄せた糸は>どこにも何にも誰にも<繋がって>いませんでした。再び<灰色の視界の中で>途方に暮れる主人公。改めて<一人で歩くのは簡単じゃなかった>と痛感せざるを得ません。絶望と孤独を感じながら、また立ち上がるのは難しいこと。それが<一人>の“弱さ”でしょう。 「ねぇ、いつか朝日を見よう」 そう言って君は手を そっと差し出した 「願い」/Uru  そうやって<一人>の限界を思い知ったとき、出逢えたのが<君>です。ダメになりそうな<私>に<手をそっと差し出し>てくれた。やっと<一人>から<二人>になれた。何より「ねぇ、いつか朝日を見よう」という言葉は<灰色の視界>を照らす“未来の希望”になった。こうして、ここから<私>は<君>と、まだ見ぬ明日へ歩んでいくのです。 軋む世界に飲み込まれながら 大事な物ボロボロこぼしながら それでも二人で願った どこかで見たような日常でいい 傷つくだけの世界なら もう いらない いらない いらない いらない いらない 「願い」/Uru 歪む道に足を取られそうでも 風に揺られグラグラ倒れそうでも それでも二人で願った すぐに消えそうな幻なんて 偽りだけの世界なら もう いらない いらない いらない いらない いらない 「願い」/Uru  未来へ進む二人の「願い」とは<どこかで見たような日常でいい>というシンプルなもの。だけど<どこかで見たような>という俯瞰的な表現から、そんな平凡な幸せさえ<二人>には、ほど遠いものである現実が際立ちます。でも、それでも、軋む世界にも、歪む道にも、酷い風にも、<二人>の「願い」がかき消されることはありません。    この<どこかで見たような日常でいい>という「願い」は、同時に“それを手にするまでは生きるんだ”という“決意”でもあるのではないでしょうか。きっと「ねぇ、いつか朝日を見よう」と<君>が言ったあの日から、ずっと<二人>は、同じ<朝日>を「見たい」と願いながら、「見るんだ」と決意しながら、歩いているのです。 例えば汚れた景色も 醜い街の色も 歩いた分だけ増えていくけど 信じるものがあるから 涙はもう流さないよ そして今 新しい日々を 歩く 軋む世界に飲み込まれながら 大事な物ボロボロこぼしながら それでも二人で願った どこかで見たような日常でいい 傷つくだけの世界なら もう いらない いらない いらない いらない いらない 「願い」/Uru  もちろん<二人>になったからといって、あの<灰色の視界>がすぐに変わるわけではないでしょう。むしろ<汚れた景色も 醜い街の色も 歩いた分だけ増えて>いきます。ただ今は、それ以上に強い“<信じるもの>=<朝日>=<日常>の幸せ”が、二人の<新しい日々を 歩く>ための希望となっているのです。だから二人は“強い”のです。    サビで何度も繰り返される<いらない いらない いらない いらない いらない>というフレーズ。余計なものを振り払いながら、一歩一歩、踏みしめながら進む<二人>の姿を象徴しているように思えますね。曲が進むにつれ増してゆく“強さ”が、わたしたちの心を揺さぶります。様々な感情を是非、歌詞から、歌声から、サウンドから、感じてみてください。 ◆紹介曲「 願い 」 作詞:Uru 作曲:H.Aoba・N.Sasaki ◆New Single「願い」 2019年7月26日先行配信 2019年9月11日CD Release 初回生産限定盤 AICL-3753~4 ¥1,900(税込) 通常盤 AICL-3755 ¥1,200(税込) 初回プレスカラートレイ仕様 期間生産限定盤(アニメ盤) AICL-3756~7 ¥2,000(税込) <収録曲> M-1 願い M-2 Scenery M-3 白日 M-4 remember Self-cover ver. M-5 願い -instrumental- M-6 Scenery -instrumental-

    2019/08/13

  • 見田村千晴
    私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。
    私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。

    見田村千晴

    私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。

     今秋に“見田村千晴”がニューアルバムのリリースを発表しました。その発売に先駆け、6月19日を皮切りに3ヶ月連続配信リリース企画がスタート。すでに、第1弾「 禁煙席 」と第2弾「 あの日雨が降ったから 」が配信中です。そして今日のうたコラムでは、ニューアルバムリリースに向けて、3ヵ月連続“ご本人歌詞エッセイ”をお届けいたします!    まず第1弾では、見田村千晴さんと【言葉】の関係を綴ってくださいました。タイトルは『言葉は思考だ』です。彼女が、どうやって歌詞を生み出しているのか。彼女にとっての曲作りとは、言葉とは。そして、どんなところからインスピレーションを得ているのか。是非、歌詞と併せて、歌詞エッセイをご堪能ください…! 【第1回:言葉は思考だ】 歌って、どうやってつくるんだっけ。歌詞って、何を書けばいいんだろう。アコギを持って、ライブハウスで歌を歌うようになってからもう12年ほどが経つというのに、今でも途方に暮れる。どうしてなんだろう。自分には向いていないのか。正直、それはなんとなく感じている。それでも、もう少し足掻いてみたい。 何百回、何千回としてきた自問自答はそれすら形骸化して、最近は“諦め”に近い。こんなに苦手意識のあることを12年も続けて、偉いじゃないか! ここまでずっと分からなかったことは、おそらくこれからも分からないままなんだから仕方がない! 一旦、今夜は友達と飲みにでも行こう! …という具合である。 それでもいざ取り掛かった私を救ってくれるのは、いつも言葉だ。私は、書いた歌詞にメロディーをつけていく、いわゆる「詞先」で曲をつくる。しかも、Aメロから順番にでないとうまくいかない。例えばサビだけ先に作って、あとからさかのぼって辻褄を合わせる、ということが苦手なのだ。 言葉にはリズムがあって、リズムがぴったりとしっくりとくる歌詞(この段階ではメロディーも無いので、散文のようなものだけれど)が書けると、もうそれだけで「もらった!」という気分になる。そして勝利に酔いしれながら寝たものの、翌日見返してみると全然良くなくて落ち込む、ということもよくある。そんな繰り返しだ。私にとって、曲作りとは「言葉探し」なのだ。 言葉とは思考である。では、その思考はどこからくるのか。友人との会話、日々のニュース、映画、本、テレビ。過去の記憶や、電車内で聞こえてきた会話だってそうだ。そして私にとって一番大きな拠り所が、「ラジオ」だ。 私は1人でいるほとんどの時間、ラジオを聞いている。高校生の頃、「オールナイトニッポン」を家族に気付かれないよう枕元で小さな音で聞いていたのをきっかけとし、大学で上京し夜型生活の一人暮らしになったことで、それ以降その沼にどっぷりと浸かっていったのだ。最近はradikoのタイムフリーや、Podcast、ラジオクラウド等も使いながら、言葉の海を縦横無尽に渡り歩いている。 ラジオは、物事の多面性に気付かせてくれる。自覚すら上手にできていなかった、漠然とした「違和感」に、言葉と論理を与えてくれる。生きづらさを抱えて密かに苦しんでいることについて、肯定し、決して孤独ではないんだと教えてくれる。 ラジオの若者離れ、というのはよく耳にする話だが、私に言わせてみれば、こんなに最高なパラレルワールドがすぐそばにあるのに知らないだなんて、どうかしている。可哀想だとすら思ってしまう。私はラジオに助けてもらったことが本当にたくさんあるし、ラジオで作られた思考が私の言葉を作り、その言葉が私の楽曲を作っている。断言する。 …と、まるでラジオ普及コラムのような文章になってきてしまったが、これが私と「言葉」との関係性である。その自分の言葉を、自分の歌で表現するだなんて、なんて幸せなことなんだろう。全力で、守りたいと思う。これはただのエゴかもしれない。けれど、私と似た誰かのことも、きっと守る力があると信じている。 <見田村千晴> ◆配信シングル第1弾 「 禁煙席 」 2019年6月19日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第2弾 「 あの日雨が降ったから 」 2019年7月24日配信 作詞:見田村千晴 作曲:見田村千晴 ◆配信シングル第3弾 2019年8月28日配信 ◆今秋フルアルバムリリース決定! 近日情報公開!

    2019/08/09

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