美しくて、泣きそうになった。この町は、美しくてしょうがなかった。

湯木慧
美しくて、泣きそうになった。この町は、美しくてしょうがなかった。
2020年8月19日に“湯木慧”がメジャーファーストEP『スモーク』をリリースしました。今作について彼女は「モノが燃えて灰になるまでの間で生み出される煙のように、自分と他者、人間と人間、過去と未来、理想と現実、そのどちらでもないという曖昧なモノ、それらの間で生み出される煙のような感情を作品にしました」とコメント。 さて、今日のうたコラムではそんな最新作をリリースした湯木慧による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は 第1弾 に続く、第2弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲「 追憶 」と「 Careless Grace 」についての想い。彼女が何を見つめ、何を感じ、何を伝えたくて誕生した2曲なのか…。是非、歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。 ~歌詞エッセイ第2弾~ 「おばちゃん、ちょっと散歩してくるー」「はーい暑いからね、ちゃんと水分とるんだよ、あと道路の向こう側の山には入っちゃダメだよ。山では、頭の黒いイノシシが一番こわいからね。」「んー、行って来まーす」 崩壊しかけてもう山の一部になってる家屋 そのままになった家具達、 今にも動き出しそうな埃をかぶる車椅子。 捲られることのないカレンダー 息絶えた時計に、 咲き乱れる、山野草(さんやそう)。 胸が苦しいのに、どこかその景色に心を奪われていた。 「ただいまー。」「おー◯◯ちゃん、おかえりおかえり。こんなあちーのに外で何しちょった?笑 あ、今から神社の祭りの練習っちゃあるんやけど、見にくるか? (お酒をクーラーボックスに準備中) …練習の後みんなで飲むんや笑笑へへへ」 おじいちゃん、 その子供、 の子供。 お母さんや、カブトムシも見ている中、 おじいちゃんが孫の代に、 神社に伝わる伝統的な舞を教えて、 お父さんは太鼓を叩き、少年は神楽を舞う。 蚊取り線香の匂いと共に、 夕暮れの風が吹いて、背景が踊り出す。 美しくて、泣きそうになった。 この町は、美しくてしょうがなかった。 朝には霧がかる山や、 煩いのに心地いい虫達の声、 町中流れる湧き水の音や、 その水で育った米や、 このお祭りと受け継がれている伝統の舞、 全て、美しくて、苦しかった。 朽ちてゆくのだろうか、 いや、全てのものは朽ちるものか。 場所も、もちろん人間も、 私も。 朽ちてゆくのか。 またまっしろな画面に、一から文字を書き始め、つらつらと書いていたら、今728文字あたり。湯木慧歌詞エッセイ第二弾です。 今書いていたのは、 『スモーク』というCDの中のトラック3 「 追憶 」という曲についてです。 この曲が生まれるきっかけとなった景色や物語を、少し書いてみました。書きながらおばあちゃん家でとって食べたトマトを思い出していたら、お腹がすいて来たので、足早に次を書いて、トマト、買いに行こう。 どれにしようかな? どっちにしよう。 これがいいかな…。 あれも…いいなあ… いや…でも、違う方がいいかも。 わかんないな、 わかんない。 好きかも、 わかんない。 次に紹介するのは 『スモーク』というCDの中のトラック4 「 Careless Grace 」という曲についてです。 優柔不断や、曖昧さ、不安定さ、が表現されてる楽曲で、その危うさや、そのままであるという美しさを歌にしました。 でも実はこの曲完成していないんです。 完成していないと、思っていたんです。 でも、収録しました。 2番以降Dメロ作って、ラスト作って、歌詞にもオチを見出して、分かりやすく、綺麗に形作って…。ってそんなことを思っていた曲が、2番以降もなく、音はフェードアウトで消えて、音源は終わる。 それがそのまま収録される。 それこそが、作品だったのです。 それこそが、一つの美しさだったのです。 この曲は、完成していないと思っているまま収録されることに、美しさを見出している、とても特殊な、特別な、行為として、一番今作『スモーク』を表してる楽曲なのです。 曖昧と言ってるだけあって、 なんだかこの曲に対するエッセイも 曖昧な感じだなぁ。 “まぁ、いいや” と言うわけでこんな裏話なんかをしていたら、 1344文字目です。 では今日はここら辺で終わりにしようと思います。 次回は第三弾。 ラストです。 CD『スモーク』の中から 「スモーク」という曲と「狭間」という曲について。 次回は、ボリューミーになりそうだな。 そしてまた白紙に戻るんだな。 じゃあ、次回でお会いしましょう。 湯木慧でした。 トマト買いに行こう。 <湯木慧> ◆紹介曲「 追憶 」 作詞:湯木慧 作曲:湯木慧 ◆紹介曲「 Careless Grace 」 作詞:湯木慧 作曲:湯木慧 ◆メジャーファーストE.P.『スモーク』 2020年8月19日発売 初回限定盤 VIZL-1768 ¥2,400+消費税 通常盤 VICL-65379 ¥1,800+消費税 <収録曲> 1. Answer 2. 雑踏 3. 追憶 4. Careless Grace 5. スモーク 6. 狭間
























