わたしにとって叫びとは歌を作る上でなくてはならないものなのです。

川村結花
わたしにとって叫びとは歌を作る上でなくてはならないものなのです。
2020年にCDデビュー25周年を迎えた、シンガーソングライター・川村結花。今日のうたコラムでは、その記念企画として2020年~2021年の2年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けしてまいります!更新は毎月第4木曜。 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は第17回をお届けいたします。 第17回歌詞エッセイ:叫びたがる心 西の方から梅雨入りが始まりつつあるせいで、曇天率が高く朝から重たーい気圧に心も身体もやられがちな最近。親しい誰かとどっか飲みに行こうにも、叶わずの日々は長きに渡り。故に自宅でハイボールをちびちびやりながら、ひとりピアノと五線紙に向かう静かな日々を送っております、シンガーソングライター・川村結花であります。 でもね、今月初めには1年3ヶ月ぶりにライブというものが出来たのでした。それも大好きなピアニストでありシンガーソングライターの斎藤有太さんと。グランドピアノを2台、向かい合わせて交互に弾き歌いセッションし、という至福の時間。あの夜のシアワセとお客様からいただいたエネルギーが新しい曲を作りたいと願う燃料となって、今のわたしを動かしてくれているのです(大感謝!)。 そんなわけで久しぶりに本当に本気で新しい曲が書きたいと、魂が欲しているのをひしひし感じ、喜びを噛みしめているわたしです。例えるならばそれは、あっついあっつい温泉のあっちこっちで茶色いお湯の玉がボコボコ弾けている状態です。湧き上がって来るあっつい泡はココロの叫びです。 叫び、と言ってしまうとどうしても激しい感情を思い浮かべてしまいがちですが(そしてそれも大いにありなのですが)それだけじゃない。いとおしさや尊さ大切さ安らぎといった優しく静かな感情。もー、挙げればキリがないけれど、なにしろ表現せずにはいられない。外に出さずにはいられなくて、溢れ出す感情全てを叫びと呼んでいます。そしてそれこそを言葉にしメロディにしピアノに託すというのが、わたしの歌づくりにおける信条です。 なので、そういう状態=心の中にあっつい温泉の泡ボッコボコしてる状態、にいる時は、とにかく文字でも音符でも書いていたい。歌いながらピアノ弾いていたい。その世界に浸っていたいのです。今も5つくらいその泡が湧いて来ていて、毎日少しずつあっちに手をつけこっちに手をつけ、というのを繰り返している最中です。すべて自分のための歌であります。 それと同時に、ご依頼いただいている提供楽曲の歌詞も進めています。そちらの方は勿論アーティストさんやスタッフさんからのご要望がありますので、そこから外れないように指定された内容の範囲内であれやこれや物語の場面を考えます。 たとえば、失恋の歌にしてほしい、というオーダーだったとしたならば、サヨナラした3日後なのか。1年後なのか。今自分はどこにいて何を見ているのか。などなど。そのうち、あ、こういう場面がいいな。だとしたら自分はどんな気持ちでいるだろうか。そしたらきっとこんな感情が湧いてくるだろうな。ああ心が叫んでるわ、、、となって叫びに辿り着き書き始める。逆の方から攻めて行くやりかたをしているんやわ、と今初めて気づきました。 なににせよ、わたしにとって叫びとは歌を作る上でなくてはならないものなのです。それは言葉にならない時だってあります。心のままに弾いていたピアノの響きがただただ美しかった。そこに無理やり歌詞をつけるよりこのままインストの曲にしてしまおう。メロディが、コードがもう叫びを代弁してくれている。それもわたしにとっては歌なのであります。 なので、よく「なんにもないところから作る」という言い方をしますが、なんにもないなんてことはないのです。これまでの生きて来た道がある。喜び悲しみがある。感じる心がある。叫びがある。そこから作るのです(わたしは)。 なんだか語ってしまいましたが。久しぶりのライブで物凄く初心に立ち帰ったせいでしょう。50を過ぎて25年+1年やっていても、本質は変わらないのですね。今でも叫びが心に生まれてくれることがわたしにはただただうれしく、ちょっとほっとしていたりします。ああよかった、心は枯れてなかったわ。また歩いて行ける。よし作り続けよう。 <川村結花> ◆プロフィール 川村結花(シンガー・ソングライター) 大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。 オフィシャルサイト: https://www.kawamurayuka.com ◆歌詞エッセイバックナンバー 【第1回】 【第2回】 【第3回】 【第4回】 【第5回】 【第6回】 【第7回】 【第8回】 【第9回】 【第10回】 【第11回】 【第12回】 【第13回】 【第14回】 【第15回】 【第16回】























