かんざし

宵の訪れは閉じ籠めた花が微笑む
小さな唇が漏らした煙が手招く

「君に似合うから」そう言って贈られたかんざしは
誘い蜜となり無邪気な優しさに手を振るの

心があなたに寄り道してもそばにいれない
愛だけを弄(まさぐ)って夜へ帰るわたしをどうか許して

砂利を這う音が描く轍はどこへ向かう?
先を駆くためのまとわりつく美が枷(かせ)になる

求めた自由のため身請けされて役目を終えるわ
欲に抗って本物の恋に手を振るの

心があなたに寄り道できずそばにいれない
華やいだ街を出て他所(よそ)へ帰るわたしをどうか許して

卑しいかんざしはそっと赤い花を咲かすの
すべてを捨て去ったのになぜか今がいちばん綺麗なの
心があなたに寄り道したまま消えてゆく
綺麗なまま散って土へ還るわたしをどうか許して
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