時の子

あれは夢だったのか
軍服に水筒を下げて
遠くから帰ってきた姿に
驚いたら消えてしまった

あなたと暮らす朝焼けの窓
針が動くたび進みゆく
毛糸のように記憶が
静かにほどけていくから
わたしたちは時の子

ここに憶えている
田舎から来た若者と
駆け落ちした頬の熱さ
おままごとみたいな新婚だった

あなたを探す夕暮れの駅
針が動くたび近づいた
子供みたいな照れ笑いを
待ちわびていた毎日
わたしたちは時の子

わたしは一人真夜中の淵
針を回すたび戻りゆく
瞼の奥で硝子の銀河が広がる
19歳の初恋を迎えにいらして

あれは夢だったのか
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