| 雨が空から降れば-いまむかし-小室等 | 小室等と六文銭 | 別役実 | 小室等 | | 雨が空から降れば オモイデは地面にしみこむ 雨がシトシト降れば オモイデはシトシトにじむ 黒いコーモリ傘をさして街を歩けば あの街は雨の中 この街も雨の中 電信柱もポストもフルサトも雨の中 しょうがない 雨の日はしょうがない 公園のベンチでひとり おさかなをつれば おさかなもまた雨の中 しょうがない雨の日はしょうがない… しょうがない雨の日はしょうがない |
| 逢いたい小室等 | 小室等 | 永六輔 | 穂口雄右 | | 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい 逢いたい |
| 比叡おろし小室等 | 小室等 | 松岡正剛 | 松岡正剛 | | 風は山から降りてくる レタスのかごをかかえて 唇はくびれていちご 遠い夜の街を越えて来たそうな うちは比叡おろしですねん あんさんの胸を 雪にしてしまいますえ 風は琵琶湖に落ちてくる 北山杉を下に見て 夕焼けはよそゆきマント 光る銀の靴をはいていたそうな うちは比叡おとしですねん あんさんの胸を 雪にしてしまいますえ 風は今夜も吹いている 死んでは駄目よといいながら さよならは小さなみぞれ そっと京都の闇に 捨てて来たそうな うちは比叡おろしですねん あんさんの胸を 雪にしてしまいますえ うちは比叡おとしですねん あんさんの胸を 雪にしてしまいますえ |
| さすらいの唄小室等 | 小室等 | 唐十郎 | 小室等 | | 「かえるが鳴くから帰るなら、 帰る家のない子に かえるは何て鳴くんだろ? やはり カエロー カエローと鳴いてらあ。 帰る家のある子のために鳴いて 帰れなくなっちまった かえるも いるんだろうなあ。」 ある夕方のこと 風が俺らに伝えたさ この町の果てで あの子が 死にかけていると 俺は走った 呼んでみたさ だけど 俺を呼ぶ声はなかったさ ある夜のこと 風が俺らに伝えたさ この町の果てで 死んだ子がいると 俺は走った 呼んでみたさ だけど 俺を待つ墓はなかったさ それからある時 風が俺らに伝えたさ この町の果てで あの子が俺を呼んでると 俺は走らぬ 言ってやったさ それは風のいたずらだと |
| 蝉しぐれ小室等 | 小室等 | 及川恒平 | 小室等 | | しぐれよ 蝉しぐれ 遠い夏 耳を押さえても指の隙間から 忍びこむ悲しい歌よ 枯れて落ちなければ 花ではない恋ではないと そんなふうに聞こえる日が 不意に来ました しぐれよ 蝉しぐれ 長い道 人のいのちを季節にたとえれば ひとめぐりしたのでしょうか 今は息の音が 聞こえるほど静かだけれど 胸の奥の蝉しぐれは 鳴きやみません |
| 別れの歌小室等 | 小室等 | 佐々木幹郎 | 小室等 | | きみのまえに 蛍もいなければ 雪もなかった まどろみの中で 歌はおわり まぶたの先で 沈丁花が匂う きみのまえに 光あふれ 空へとのぼり 大地へ降りて まぶたの中で 漂うのは 鳥かもしれない きみのまえに 漂うのは 鳥かもしれない どこへも飛ばぬよう どこへも行かぬよう けれど鳴き声は 世界中にひびく きみのまえに 蛍もいなければ 雪もなかった まぶたの先で 沈丁花が匂う どこで生まれたのか この悲しみは |
| けれど 別れには小室等 | 小室等 | 佐々木幹郎 | 小室等 | | けれど 別れには 悲しみを超えて 雨のしずくのその先に落ちる したたる夢の明るさ 取り残された人の ここにいることの確かさ 何を失ったか わからないままに 歩いてきた足跡のままに 白い霧がわたしたちを癒す その上にある 満天の星 もの言わぬ 地上の紫陽花 愛していたコーヒーカップ 鳴り止んだスマートフォン 永遠に笑顔の写真 時が止まり それでも 小鳥たちは鳴き 緑の枝の風のうなり 別れた人の声が 遠くから聴こえる 「地上とは思い出ならずや」 この甘味さを誰が知るだろう |
| だれかが風の中で小室等 | 小室等 | 和田夏十 | 小室等 | | どこかで だれかが きっと待っていてくれる くもは焼け 道は乾き 陽はいつまでも沈まない こころはむかし死んだ ほほえみには会ったこともない きのうなんか知らない きょうは旅をひとり けれどもどこかで おまえは待っていてくれる きっとおまえは 風の中で待っている どこかで だれかが きっと待っていてくれる 血は流れ 皮は裂ける 痛みは生きているしるしだ いくつ峠をこえた どこにもふるさとはない 泣くやつはだれだ このうえ何がほしい けれどもどこかで おまえは待っていてくれる きっとおまえは 風の中で待っている |
| 道小室等 | 小室等 | 黒田三郎 | 小室等 | | それは美しい伯母様の家へ行く道であった それは木いちごの実る森へ行く道であった それは夕暮ひそかに電話をかけに行く道であった 崩れ落ちた町のなかに 道だけが昔ながらに残っている いそがしげに過ぎてゆく見知らぬひとびとよ それぞれがそれぞれの中に違った心をもって それぞれの行先に消えてゆくなかに 僕は一個の荷物のように置き去られて 僕は僕に与えられた自由を思い出す 右に行くのも左に行くのも今は僕の自由である 戦い敗れた故国に帰り すべてのものの失われたなかに いたずらに昔ながらに残っている道に立ち 今さら僕は思う 右に行くのも左に行くのも僕の自由である |
| 見えない配達夫小室等 | 小室等 | 茨木のり子 | 小室等 | | 三月 桃の花はひらき 五月 藤の花々はいっせいに乱れ 九月 葡萄の棚に葡萄は重く 十一月 青い蜜柑は熟れはじめる 地の下には少しまぬけな配達夫がいて 帽子をあみだにペダルをふんでいるのだろう かれらは伝える 根から根へ 逝きやすい季節のこころを 世界中の桃の木に 世界中のレモンの木に すべての植物たちのもとへ どっさりの手紙 どっさりの指令 かれらもまごつく とりわけ春と秋には えんどうの花の咲くときや どんぐりの実の落ちるときが 北と南で少しづつずれたりするのも きっとそのせいにちがいない 秋のしだいに深まってゆく朝 いちぢくをもいでいると 古参の配達夫に叱られている へまなアルバイト達の気配があった 三月 雛のあられを切り 五月 メーデーのうた巷にながれ 九月 稲と台風とをやぶにらみ 十一月 あまたの若者があまたの娘と盃を交す 地の上にも国籍不明の郵便局があって 見えない配達夫がとても律義に走っている かれらは伝える ひとびとへ 逝きやすい時代のこころを 世界中の窓々に 世界中の扉々に すべての民族の朝と夜とに どっさりの暗示 どっさりの警告 かれらもまごつく 大戦の後や 荒廃の地では ルネッサンスの花咲くときや 革命の実のみのるときが 北と南で少しづつずれたりするのも きっとそのせいにちがいない 未知の年があける朝 じっとまぶたをあわせると 虚無を肥料に咲き出ようとする 人間たちの花々もあった |
| 銀座ヤマハのラブソング小室等 | 小室等 | 小室等 | 小室等 | | 銀座四丁目から 新橋に向かうと そこは七丁目 銀座ヤマハ 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング きみに会いたくて ヤマハに行った きみの働く 楽譜売り場に 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 楽譜売り場には 新しいソングブック ジョーン・バエズもPPMも ボブ・ディランもいて 輸入楽譜に 心は弾む そこは七丁目 銀座ヤマハ 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 楽譜売り場から 日比谷公園 時間あるまで いつまでも歩いた 気がつけば七丁目 銀座ヤマハ 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング 銀座ヤマハ ヤマハのラブソング |